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宿木、探り求める者I



     ***

 街北側の大通りから一本裏手に入った場所。
 大きな建物と建物の隙間に開いた細道を抜けて、 日当たりの悪い奥まった場所に、その宿はあった。
 ここが──マイグラトリーレア、なのだろうか。
 ○○のそんな呟きに、隣のエンダーが軽く頷く。

「らしーぜ。要は宿木に所属する人間の為の宿泊施設と、 宿木外の人間に対する窓口を兼ねたもので、 ここみたいな一見宿屋みたいな建物が一般的なマイグラトリーレアなんだと。 んじゃ、入るぞ。──オッサン悪い、待たせたっ!」

 エンダーはそう声を掛けつつ、扉を開いて建物の中へと入る。
 内部に人気は殆ど無くがらんとしており、居るのは質の悪そうな紙の束をテーブルに広げて睨んでいた店主らしき男が一人だけ。

「お? 戻ったか小僧っ子」

 声と気配に反応して面を上げた店主は、店に入ってきた面々を順にじろじろと眺めてからエンダーに視線を戻し、

「……で、そいつらがお前の連れか? さっきの話じゃ、あと一人という事だったが何だか増えてないか?」

エンダー


「ちょっと増えた。まぁこいつも紹介状持ってるからいいだろ?」

 エンダーが軽く返すと、男の片眉が訝しげに上がる。

「──まさか、そっちの紹介状も署名は」

「ん? 多分、同じじゃねーかな、書いた人は」

 どうだっけ、とエンダーはこちらに視線を送ってくるが、書面の中身を確かめた訳ではないので答えようが無い。
 物を見せるのが早いだろうと、○○はツヴァイに“関連付け”て貰った紙筒を取り出して店主に手渡す。
 男は手早く封を切り、そして文面の終端を見て、

「“英雄”殿の紹介状がなんでこんな量産されてんだよ!? おい小僧、紛いもんじゃねーだろうなっ!」

 荒げる声に、エンダーは肩を竦めて返す。

「写しかどうかはそっちで判んだろ? ほれ、アリィ。お前も姫様から貰ったもん、あのオッサンに見せてやれよ」

「はい」

「…………」

 アリィが取り出した同様のものを店主は食い入るように見つめ、時折テーブルの脇に置かれていた薄く平たい透明の石板で透かすようにしたりする。そしてテーブルに並べた三つのそれらを交互に見て、深々と息を吐いた。

「……信じ難いが、偽物じゃねえな。つーかなんだこりゃあ。文字とかは胡散臭いくらいに同じだってのに、きっちり署名の部分の仕掛けだけはちゃんと別になってやがるし。おいお前ら、これどういう流れで手に入れたんだ?」

「? 頂きました」

「いや、頂いたのはそりゃそうだろうがよ……。まぁいい。じゃあ、適性だけ測らせてもらうぞ」

 丁度眼前に居たアリィの返しに呆れの溜息をつきつつ、店主はテーブルの下から更に小さな石を幾つか取り出すと、それを○○達にひょいひょいと手渡していく。
 受け取った石は別段おかしなところはない。ただ、見たことも無い種の材質ではあった。この群書特有のものなのだろうか。

「オッサン、何だよこれ」

「適性検査だ。例え紹介状があろうが、これだけはやっとかねーとな。実は適性なかったとかじゃ、俺の信用とお前らの命に関わる」

 エンダーの問いに対し、何やら物騒な単語が返って来た気がしたが、○○がそれに言及する前に店主は言葉を続ける。

「ほれ、一度思いきり握りこんでから、石を俺に見せろ」

 言われた通りにそれぞれが石を見せる。店主は石を順々に回収し、石の状況と○○達の掌を矯めつ眇めつして一つ頷いた。

「反応なし。ま、取り敢えず第一関門は突破だな」

 そして、こちらを見てにやりと笑う。

「“探求者”としての推薦は受け入れよう。──ようこそ、宿木《ヴィスクム》へ。我々はお前たちを歓迎……出来るかどうかはもう一つの関門、“試し”の結果次第だがな」

続く







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