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出逢い

前へ
「走るのは得意か?」

 楯のかげでぶんぶんと首を横にふる。

「すまない、囲まれた」

 いきなり謝られ、天地が逆になった。

「え――!?」

 青空をみつめながら半ばパニック状態で手をふりまわす。

 彼――モルトの放り投げ方がよほど上手だったらしく、わたしはすとんと尻もちをついて無事着地した。離れた石壁のうしろに。

 ――逃がしてくれたんだ。

 次の瞬間。
 十数人のブラックベレーのただなかにとりのこされたモルトが、一体の黒い塊と化した。

 楯の一撃で3人の兵士をふっとばし、ふりむきざまの打擲で、さらに3人を地に沈める。

 ――稠密《ちゅうみつ》隊形!
 ――銃剣を使え!

 突きだされる白刃と銃弾をかいくぐり、楯による打撃と体術だけでみるみる敵を昏倒させてゆく。

 ――武器、使わないんだ。

 みたこともない格闘術。
 だけどルクレチアの最精鋭部隊と比べても、その腕力と敏捷さはきわだっている。

 のこるブラックベレーは、あとふたり。モルトの動きが止まった。

「危ない!」

 わたしが声をあげるのと、ふたりのブラックベレーが左右から銃剣を突きだすのと、同時だった。

「――!」

 モルトが消えた。
 目にもとまらぬ速さで、大地に伏せていた。
 ふたりのブラックベレーが、たがいの胸板をつらぬく。

 遅れて、鮮血がほとばしる。
 思わずまぶたを閉じた。

「おい、大丈夫か! ……クソ、殺しちまったか」

 ――あれ?

 目をあけると、ルクレチア共和国正規軍の最精鋭十数名をひとりで倒した彼は、倒れたブラックベレーを必死で介抱していた。

 ――敵じゃ、なかったの?

 そのときだった。

「――!」

 死んだはずのブラックベレーが突如として立ちあがった。
 ひらききった瞳孔はそのまま。
 顔に表情はない。
 まるで“生ける屍”のように。

 つづいて、昏倒していた兵士たちも次々に起きあがり、モルトに歩みよる。

「こいつら、まさか――ストラルドブラグ!」

 棺型の楯をかまえなおしながらモルトが叫ぶ。その声に、この場にふさわしからぬ、優美な女性の声音がこたえた。

「ご名答。最新作の人形たちよ――お気に召したかしら?」

─See you Next phase─


【選択肢】
まだ決めていない
風まかせ
声の主をさがす
周囲をみまわす
モルトの方をみる




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