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出逢い |
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「よし! ――え!?」 足がもつれてすっ転んだ。 フィルムを拾い、戦場の現実をフレームにおさめるというわたしの野望はわずか3秒で挫折した。 手のなかに違和感があった。 「――武器?」 転んだはずみにつかんだのは、兵士さんの落としもの。放りだすと目を惹いてしまいそうで、そっとバッグにおさめる。 ☆〇〇は望遠レンズを手に入れた! ☆ルティアはグラディウスを手に入れた! ――とにかく。 ここで負けては女がすたる。 当社比40%まで低下した勇気が完全にくじけないうちに、もういちど…… 「伏せてろ」 すごい力で頭を押さえられ、わたしは再び地面につっぷした。 きゅきん、ごんごんごん。 至近距離で着弾音。 噛んだ砂が口に苦い。頭を押さえられ、視界は真っ暗のまま。 「みつかったか。そのまま隠れててくれればよかったんだが――」 男の人の声。 ふっと頭が軽くなって、広い背中がみえた。 ――棺《かんおけ》? 彼は真っ黒い棺みたいな巨大な楯で、銃撃を防いでいた。 頬にうっすらと無精ひげを生やした、大柄な男の人。 彫りの深い横顔。 碧翠色の瞳は微動だにしないままじっと前方をみつめている。 ――旅の傭兵? そんな風にみえた。 頑丈そうな革ブーツに、カーキ色の上着、ぼろぼろの革マント。 服の上からでもはっきりわかる鍛えられた筋肉。 でも、武器はもっていない。大きな棺型の楯だけだ。 「こんなところで何してた?」 ふりむいて、小声でたずねられた。胸にかかえたカメラと、左肩の腕章を無言でしめす。 「報道局の准記者章? ――アルバイトの見習いカメラマンってところか」 的確すぎるプロファイリングに何も言いかえせずにいると、彼はちっと舌打ちした。 「あの――?」 上目づかいで視線をむけると、彼が短く告げた。 「モルトだ」 ……名前を聞いたんじゃないんだけど。 続き |
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