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幻の中の幻

     ***

(……勝った、か)

 もしエンダー達の攻撃で倒せなかった時の為、後詰めの一撃を放つ準備をしていた○○は、内心でそんな言葉を思いつつ、ゆっくりと構えを解いた。

「そっち終わったッスかー?」

 と、そこに気が抜ける軽い声が響いて、緊張に満ちていた空気をより弛緩させる。
 背後を振り返れば、少し離れた位置、“歪み”が湧き出ていた穴──戦闘している内にそこから離れていたのだ──があった場所から、ふわふわと竜の着ぐるみがこちらに向かって飛んでくる。
 ○○が見ての通りとばかりに手を広げて頷くと、疲れているのか目を半ば閉じかけたサニファは、ごつんと○○の肩に衝突した。そこからわきわきと短い手足を動かして肩の上に登ると、小さく一息。

「こっちも何とか終わったッスー。取り敢えず、空いた穴は周辺含めてばっちり塞いどいたんで、もう先刻みたいなのが出てくる事は無いと思うッス。あと──」

『○○さん?』

 突然、サニファの身体から響いてきた声に、○○はびくりと身を震わせた。

『こちらツヴァイですが、聞こえていますでしょうか? 私の方から観測する限りでは、エンダーさんとアリィさんも傍にいらっしゃるようですが』

 そういえば、この着ぐるみは“栞”の化身だったか。ならばサニファの身体からツヴァイの声が響いてくるのもおかしくはないが──しかし、現在この“竜の迷宮”ではツヴァイ達の干渉が正常に行えない、という話では無かったか?
 そんな内心の疑問に、サニファが続く言葉で答える。

「同時に、箱舟側から“竜の迷宮”に干渉する際に起きていた不具合も収まったみたいッス。今聞いてもらった通り、姫姉様からの声も楽々届いてますし。自分、色々本から存在を抽出するための述式を積んでたんスけど、丸々無駄になっちゃったッスかね、こりゃ」

 そしてサニファは視線を○○から外し、少し離れた位置で座り込んでいるエンダーと、“膿”を砕いた場所でぼんやりと立ち尽くしているアリィの方へと顔を向ける。

「で、エンダー様たちも、大丈夫ッスかー?」

 掛けられた声に、アリィは表情を変えぬまま首を小さく傾げるだけで答え、エンダーはどう答えたものかと、かりかり頬を二度ほど掻いて、


続く






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