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幻の中の幻

 エンダーの叫び。空間が鼓動を打つように歪み、まるでその波によって血が注ぎ込まれているかのように、無色の穴から染み出した“膿”は、どくんどくんと身体を巨大化させていく。
 最初は親指の先程の大きさだったそれは、驚愕で動きを止めていた○○の目の前で、既に人の背丈を越える程の大きさまで成長し、そして更に、更にと──。

「○○様、ぼけっとしてる場合じゃないッスよ! しっかりして!!」

 どん、と肩に受けた衝撃に、○○は我に返る。
 見れば、サニファが肩にしがみつくようにしてこちらを見上げていた。

「止めるッスよ! ○○様には、あのヘンなのを穴から切り離してほしいッス! その間に自分が穴の方を何とかするッスから!! そうすれば、あのでっかくなってるのは取り敢えず止まる筈ッス!!」

 切り離す? あれを? どうやって?

「何でもいいッスから!! とにかく前でも後ろでも、あの位置からあいつを退けないと! 生まれた歪みが、どんどんあいつに取り込まれて……このままじゃ自分達もあれに飲み込まれちゃうッス!!」

「つっても、退けるったって一筋縄じゃいかねーぞあんなデカブツ!」

 そこへ後ろから切羽詰った声が割り込んできた。エンダーだ。
 赤衣の少年は○○の隣に立つと、視線は“膿”へと向けたまま、苦虫を噛み潰したような表情で唸る。

「第一、ブン殴って通じんのかよあれ──って、アリィ!? 待て!!」

 更に、エンダーの制止を振り切るようにして、音も無く○○達の横をすり抜けていった影が一つ。
 するすると地を滑るように進んだアリィは、淡い光を纏った髪をたなびかせながら大きく跳躍し、一気に“膿”との距離を詰めると、手にした細枝を一閃する。
 枝先は蒼い雷光を引いて、空中に浮かびながら膨張を続けていた“膿”に激突。瞬間、空気が爆ぜるような音と共に、“膿”の上部が消滅した。

(やった、か?)

 が、しかし。

「戻りまする」

 生まれた衝撃を利用して後ろへと飛び、体重を感じさせない動きで○○達の傍に着地したアリィは、ぽつりとそう呟いて、花びらが散り終えた枝を軽く振る。
 そう、彼女の一撃によって“膿”に穿たれた空白は。

 どくん、どくんと。


続く






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