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幻の中の幻


「まぁ、その辺りは取り敢えず脇に置くとしまして……今は、エンダー様達をお助けするのを優先すべき状況ッスね」

 助けると簡単に言うが、先程のエンダーの言を信じるならば──いや、信じる信じない以前に、見れば判る。
 あそこに浮かんでいるのは、形すら無い、単なる空間の歪みのようなもの。
 それに対して攻撃を仕掛けたところで、どうにかなる筈が、

「いや、○○様。よく見て欲しいッスよ。黒星様の述式が負け気味なのが逆に功を奏しているといいますか、あれ、基本的には単なる気配でしかないッスけど、たまに形をしっかりと持つ時があるッス」

「…………」

 サニファの指摘に、○○は慌てて“揺らぎ”に視線を戻す。
 じっと、じっと見る。
 ゆらりゆらりと、何も無い空間で揺れる波紋。
 形が無い筈の、単なる歪み。
 そんなものに、明確な形など、

(……あった?)

 一瞬、波紋の中に何かの輪郭のようなものが浮かび上がったような。
 あれが、そうなのか?

「そッス。エンダー様にアリィ様も、聞いて欲しいッス!! こいつら、“常に無い”訳じゃなくて、時々“在る”状態に移行してるッス! だから、攻撃を仕掛けるなら、その“在る”時を狙うッスよ!!」

 サニファの叫びが届いたか、エンダーとアリィは○○達の方を一瞬見て、そして視線を自分達を包み込む“揺らぎ”の群れへと向ける。

「アリィ、判るか」

「……ん。あれ、ですか?」

 アリィが指差した場所に漂う“揺らぎ”。それを見て、エンダーは軽く笑みを浮かべ、

「へへ、そうと判ってりゃ、意外と見分けられるもんだな」

 言って、彼は両手の短剣を構え直すと、深く、身体の発条を溜め込むように身を屈め、叫ぶ。

「んじゃ、このままじゃジリ貧だし、さっさとやるか。──○○、そっちも合わせてくれ!!」

 その声音から、○○は彼の意図を汲む。どうやら、一気に攻めに転じ、少なくとも包囲からは脱出するつもりであるようだ。
 ○○は答えるように己の武器を構え、軽く息を吐き、吸った。

「三、二、一……行くぞ!!」

 合図。視界の向こうでエンダー達が動くのを見ながら、○○は一気に“揺らぎ”の包囲と距離を詰める。
 己と最近の位置にある“揺らぎ”は三つ。

続く






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