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羊飼い

背信の羊飼い(それなりに強そう)が現れた!
背信の羊飼い

〜戦闘勝利〜

 デモノイドの女はその場にへたり込んだ。
 その時、魔防門の方からけたたましい警鐘を鳴らす音が聞こえてきた。
 それと同時に、夜空に無数のアウターズの姿が現れた。
 その一瞬の隙をつき、デモノイドは空中へと舞い上がった。

「ナイスなタイミングだね。ここは素直に負けを認めておくよ。おや、丁度良いところに……」

 デモノイドの視線を追うと、その先にはこちらに向かってくるメリルの姿があった。
 メリルはそのままの勢いでデモノイドに飛びかかる。
 しかし、デモノイドはその初撃をかわすと、近くの家屋の屋根へと降り立つ。

飛び掛るメリル

「おっと、同じ羊飼いだってのにずいぶんな挨拶だね」

「なんだと――?」

 デモノイドの言葉にメリルの動きが止まる。

“羊飼い”――前にどこかで聞いた覚えが……
 〇〇の脳裏にペーターの言葉が浮かぶ。
(――おそらく羊飼いは他にもいる。だが、お互いの存在は――)

 メリルが再びデモノイドに飛び掛かろうとする。

「ふん、そんな戯言《ざれごと》に騙されると――」

 しかし、デモノイドはメリルが一瞬ひるんだ隙を見逃さなかった。エプロンのポケットから取り出した何かをメリルに向かって投げつける。
 メリルは咄嗟《とっさ》にそれをかわすが、避けきれず、腕に命中してしまう。命中したところから白煙が立ち上る。
 何かの薬品か?

「これ持ってるのは羊飼いだけだと思うんですけど〜?」

 デモノイドはもう一つ同じ薬瓶を取り出してみせる。
 メリルは――

「!!」

 白煙が消えると、そこに現れたのは鋭い鉤爪の生えた手だった。
 その手はメリルの手だ。
 何が起こったのか――

メリルの異変

「ほら、あたしとおんなじ」

 デモノイドが自分の腕をかざし、〇〇に見せ付ける。同じような長い鉤爪の生えた手を。
 メリルが鉤爪でデモノイドを指差す。

「貴様! 羊飼いなら何故こんなことをする! この異形共を街へ誘い込んだのは貴様だろう!」

 どういうことか。分からない。〇〇は混線する思考を束ねようと試みる。
 羊飼いとはデモノイドを狩る者のことではなかったか。
 デモノイドが羊飼い?
 ペーターの言葉を思い出す。
 不可侵協定――デモノイドが自分達で決めた取り決め――
 グラトンを狩っているのはデモノイドと通じている人間側の組織。
 違う。それはペーターが言った事ではない。勝手にそう思ったのだ。
 そう、デモノイドが自分たちで決めた取り決めなのだから、それを守らせるのもデモノイドだろう。
“羊飼い”とはつまり、牧場――即ちアーレイベルグ――で放牧されている羊――即ち人類―が獣に襲われないように見張る役目を負ったデモノイドのことだったのだ。
 まさに言葉通りだ。
 では、何故人間の組織だと思ったのか。
 メリルだ。メリルがデモノイドの組織に属しているはずはない。何故なら……
 前提条件が違っていたのか?
 つまり、メリルは……

「それより、それを見せちゃってもいいのかな〜? そっちの人がおっかない顔して見てますけど〜?」

 メリルがちらりと〇〇を見やる。その冷たい眼差しで。
 今までずっと騙していたというのか。アーレイベルグの人々を――学園の仲間を。
 思考が停止する。
 怒りは思考を停滞させ、幾つもある答えからたった一つの答えを正解として持ち上げ、妄信させる力を持つ。一度囚われると、そこから逃げ出すことは難しい底なしの罠。
 メリルは〇〇の表情を見ると、視線をデモノイドに戻した。その時にメリルが見せた一瞬の表情に、〇〇は気づかなかった。
 デモノイドはその様子を見て冷笑を浮かべる。

「ンフフ、それじゃあたしはお暇《いとま》させてもらおうかね。目的は大方達成できたしね。そうそう、あたしは別に反体制派に迎合したわけじゃないから。手は貸してるけど。幾ら狩っても後を絶たないグラトン共に嫌気がさしてね。この際、一度底辺を見せてやれば目先のことにしか興味がない馬鹿なグラトン達でも気づくんじゃないかと思って。世界が危機に瀕してるってことにね。その結果、ホントに滅びちゃうかもしれないけど、それはそれで仕方ないね。デモノイドはこの世界にとって有害な生き物だったってことで」

 自嘲気味に笑うデモノイド。

(――人類が絶滅する時、世界は闇に覆われる――光が全部なくなっちゃうと、生きていけない――)

 このデモノイドは人類を滅ぼすことの危険性を、実際に実行に移すことで証明するとでも言うのか。
 馬鹿げている。
 つまり、人類は初めから終わりまで何も知らずに、この安全な柵の中で右往左往している道化――いや、家畜でしかなかったということか。

「それじゃ、後は二人でよろしくやってねん」

「待て!」

 デモノイドは屋根から舞い上がると、夜の闇へと飛び去っていった。
 メリルが後を追おうとするが、それを邪魔するようにアウターズが数匹突っ込んできた。
 それをかわし、すぐさま迎え撃つメリル。

 ……どうする?
 このままメリルを信じて一緒に戦うことができるのか?
 メリルもデモノイド、即ち敵の仲間だ。
 しかし、今まで街を守ってきたのもメリルだ。
 人付き合いは悪かったとはいえ、学園でも今まで一緒にやってきた。
 あのデモノイドの目的も二人を戦わせることにあったのだろう。あいつの思惑通りになってもいいのか。
 しかし……

―See you next Phase―



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