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宿木、探り求める者II




 一緒に読んでいたエンダーの許可を取ってから、憲章を店主に返す。
 ちなみに、アリィは一応目を憲章の方へと向けてはいたが、 実際読んでいたのかどうか定かではないので尋ねない。実際、 文句も何もこなかったので問題ないだろう。

「もういいのか? なら、“試し”についての説明に入るぞ」

 憲章をテーブルの下に片付け、代わりに大きな紙筒を取り出しながら店主は言葉を続ける。

「“試し”ってのはまぁ、アレだな。先刻の石が“禁領侵入時の拒絶反応の有無” を測るものなら、こっちは実際に禁領に入ってやっていけるかどうか。 具体的に言うなら、忌種とやり合う力を持っているかどうかってのを測るものだ。 要は実地試験と思ってくれ。“英雄”殿の推薦ありとはいえ、最低これはやってもらう」

「忌種ってのはええと……取り敢えず凶暴な化け物って認識で良いのかね?」

 エンダーが先程憲章を読んで得た知識を確認するようにそう呟く。

「ん? 忌種見たことねぇのか? まぁ、普通に生きてりゃおかしくもない話だが」

 店主は一瞬訝しげにこちらを見て、しかし一人で勝手に納得すると、 さてどう説明したものかといった風に割れた顎を撫でた。

「そうだなぁ。受け取り方としてはそう間違っちゃいねえが、 忘れちゃいけないのが姿形はその辺に居る家畜や動物に近いが、 中身は完全に別物ってところだ。ちっさい兎が出てきたからって、 ナメて掛かると一瞬で殺される。一つ言えるのは、外での知識は捨てろってところだな」

 例を挙げると、小さな兎が現れたと思ったらその歯で首を掻っ切られるとか、 そんな感じだろうか。
 〇〇が思いついた事をそのまま発言すると、店主はふむと首を傾げ、

「どっちかというと、犬っぽい動物がワンと一声吠えたら、 真上からいきなり氷の槍が降ってくるとかそんな感じだな」

「オッサン、訳わかんねぇぞそれ」

 突っ込むエンダーに、店主は軽く肩を竦める。

「別に冗談言ってるんじゃねぇぞ。相手によっては、 それくらい意味不明な事を平気でやってくるってこった。 知らない忌種に出会ったときは、 兎に角相手がどういう行動をしてくるのかを把握する事に努めろ。まぁ、 今のお前らにしてみりゃどれも知らない相手だろうから、大した助言にならんがな」

「ぞっとしねぇ……。んで、ええと、結局俺らは何すりゃいいんだよ?  実地ってことは、禁領に取り敢えず行ってくりゃいいのか?」

「一応、こちらで目的を設定させてもらう。指定した禁領に向かって、 そこでその目的を無事こなせれば“試し”は成功、 晴れてお前たちは宿木に所属する探求者という訳だ」

 では、その目的とやらは何だろう。

「まぁ、待て。そう急ぐなよ。まずはこれを見ろ」

 店主は先程テーブル下から取り出した紙筒を解く。広げられたのは大きな地図だ。 地図の真中には“エルベ・スーケン”という文字。下端には海らしき場所があり、 左上には一色に塗り潰された奇妙な円が描かれている。
 店主はその地図の中の右上部分にある一点を指差す。

「大体、俺達が今居る街がこの辺り。んで、今回お前等に行ってきてもらう禁領が──」

 指が更に右上へと動き、左上から右下へと斜めに蛇行する線付近で停止。

「ここ。名前は“フリスコー高地”って言ってな。確か、この前エルベ・スーケンの『ジルガジルガ』 選抜式をやってたところだな」

 ──選抜式。

 その言葉には聞き覚えがあった。確か“戯馬”と呼ばれる巨大な鋼の塊に乗っていた二人、 クロエとセサルが時折言っていた言葉だ。
 となると、今から自分達が向かうのは、あの紫色に包まれた林の中なのだろうか?

「紫色の林? いや、禁領は大概紫の色彩が強くなるから何とも言えんが…… 恐らくは違うな」

 〇〇の問いに、店主は短い首を振った。

「フリスコー高地は越境禁領だからかなり広大だし、 今回お前等に行ってもらう場所はその中でもかなり僻地にあるでかい崖だ。 選抜式をやってた場所からは結構な距離がある。まぁ、 詳しい位置はパーチの方で聞いてくれ。この街から北東側に出ている街道を伝っていけば、 禁領に着く前にそれらしい集落が見つかる」

「んで? その崖に行って何してくりゃいいんだよ?」

「そこで、青色の石を掘って持ち帰ってきてくれ。それがこちらが設定する目標だ」

 青色の石。
 また何とも曖昧な指定だった。〇〇とエンダーが同時に微妙な顔をする。

「なぁに、そこで出てくる物にゃそれっぽい石は一種しかねぇから安心しな。 禁領でしか出ねぇ類のものだしな。で──」

 そこで店主はテーブルから離れると、建物の隅に無造作に積み置かれていた道具の山の中から 、幾つかの品を取り出してテーブルに並べる。

「これが、禁領用に加工調整された採掘道具一式だ。 こいつを使って崖を掘り返してりゃ出てくるだろうよ。持ってけ」

「…………」

 と、〇〇達の中で一番最初に手を出したのは意外にもアリィ。彼女はその品を手に持って、 暫し持て余すように転がして一言。

「大きゅう」

「……なんか偉い嵩張ってんな、これ。もうちょっとちっさいのねぇのかオッサン」

「贅沢言うな。それでも小さくなった方なんだぜ? いいからそれ持って掘ってこい。 今回お前らが行く崖一帯は、あまり強力な忌種は確認されていない。 そこで出くわす相手にやられるくらいなら探求者として生きてくのは諦めろ。 ──ああ、でも」

 途中までニヤニヤと厭《いや》らしい笑みを浮かべていた店主が、 言葉の途中でふと表情を改める。

「最近、そこの崖の上の方で多翼鳥に属する“禁種” が巣を作ってるって話を聞いた気がするな。……いや、 青い石を得るだけなら崖の下を掘り返すだけで済むだろうし、 こいつ等には関係のない話か」

 ぼそぼそと、〇〇には聴こえない程の小さな声で呟いた後、 そのまま店主は自己完結して顔を上げ、

「まぁ、“試し”に関する話はこんな所だな。取り敢えず、 お前らが無事に帰ってくるのを祈ってるよ。ってことで、ほら、 さっさと行って来い」

 言って、全く祈っている態度を見せずに、ひらひらと手を振ってみせた。

     ***

 〇〇達は譲り受けた採掘道具を抱えてマイグラトリーレアから出た。

「……何だかかったりぃ事になっちまったが、まぁ仕方ねぇか。」

 脇道から大通りへ。石畳の道をとんとんと、蹴るように集団の先を歩いていたエンダーが、 溜息混じりにそう呟く。

「で、〇〇。“試し”とやらも俺達、一緒にやるか?」

 拒絶する理由は無いが──もう一人の許可は取らなくていいのだろうか。
 〇〇が集団の最後尾を歩く少女に視線を送ると、エンダーはその意図に気づいて、 自身よりも背の高い彼女を僅かに見上げる。

「アリィ、問題ねーよな?」

「…………」

 問われて、暫しの間。瞼《まぶた》を数度瞬かせてから、

「はい」

 こくりと頷き、そして〇〇の方を見て、一拍の後。

「〇〇、宜しゅう」

 小さな黙礼。〇〇はその態度に少し気圧されつつも何とか頷きを返した。
 この二人の力を借りられるならば、禁領とやらの探索も多少はマシになるだろう。
 取り敢えず、宿木に所属できれば色々と便宜を図ってもらえるのは確かなようだ。 それなりに、気合を入れて取り組むとしよう。

「んじゃま、早速行きますかね」

 エンダーの声に頷き、〇〇は街の北東を目指して歩き出した。

     ***

☆〇〇は特殊採掘キットを手に入れた!

 [Notice]
 禁領探索“試し”について

 このイベントは、群書世界“ジルガ・ジルガ”に存在する探索地域“禁領” に入り、店主の言う青色の石を手に入れ、持ち帰るのが目的です。

 禁領内では“キット”と呼ばれる専用のアイテムを装備する事で、 移動時等に自動でアイテムを得る収集行動を行う事が出来ます。
 この行動は装備するキットによって手に入るアイテムが変化し、 採掘キットは主に鉱石、伐採キットは主に木材、 拾得キットはそれ以外の素材を手に入れる事が可能です。
 今回の“試し”では、 青い石を見つけるまで何度収集行動を行っても破損する事の無い “特殊採掘キット”を配布しますので、これを使って青い石を探してみましょう。

 補足として、このイベント中は配布された“特殊採掘キット” 以外のキットを使用できず、逆に“特殊採掘キット” はこのイベント中でしか使用できませんので注意してください。

 また、禁領内では持久が一定値以下になると、 毎行動の最初に体力が減少してしまいます。
 持久力が下がるほど大きく体力が減少しますので、 持久力はなるべく高い状態を維持するようにしましょう。

─See you Next phase─






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