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鳥姫の巣 歌子4戦目
世界揺るがす力

 休憩の時間。〇〇の何気ない質問に、舞台の端に腰掛け、 緩やかな歌を口ずさんでいた歌子は、一度瞬きしてかくりと首を傾げる。

「この歌の事?」

 そう。先程から、 何気ない調子で彼女が細く小さく歌ってた曲についての疑問だった。
 何処か浮き立つような、何かの訪れを待つような。 そんな爽やかな心地を耳奥に残すメロディ。
「これは“四季”──春の歌」

 四季?

「うん。春、夏、秋、冬。四つの季節。春は暖かくて、夏は暑くて、 秋は涼しくて、冬は寒いの。〇〇はしってる?」

 さて、どうだろう? 知識としては持っているが体感した記憶は無い。 季節の移り変わりを実感できるほど群書世界に滞在してはいないし、 そもそもあの世界達に四季があるのかどうかすら把握していなかった。
 歌子の方は、どうなのだろう。
 聞き返すと、歌子は手を口元にやって視線を虚空に向けて考える仕草。

「ん、んー。どうだったかな……。でも、歌えば直ぐに判る。 〇〇も判ったよね。春が、どんな感じかって」

 先程の彼女の歌。あの曲から得た感触が“春”そのものだというのなら、 実際にその季節を味わってみるのも悪くないかもしれない。

 〇〇の感想に、歌子は「良かった」と目を細め、

「……そうだ。なら今日は四季の歌に関わるのがいいかな?」

 ぽんと羽毛だらけの掌を器用に打ち鳴らして、歌子は少し声の調子を変え、 先生モードで話し出す。

「楽器の原理述にも、“ウィンタープレリュード”や“サマープレリュード”みたいに、 四季の名前が使われてるものがあります。 サマープレリュードは聴いた子達の心に夏を呼ぶことで、寒さに強くなるスキル。 逆にウィンタープレリュードは、冬を呼び込んで暑さに強くなるスキルの事」

 となると、スプリングプレリュード等もあるのだろうか。

 そんな素朴な疑問は、ふるふると左右に首を振る歌子の仕草で否定された。

「なんか暗い力に強くなる“モーニングプレリュード”とか、 まぶしくてびりびりしたのに強くなる“ナイトプレリュード”とかはあるけど。 他にも、周りの空気──“老師”が“力場” って呼んでるものを変える歌もあります。“フレイムリチューアル”や、 “ライトリチューアル”みたいなの。んと、こんな感じ」

 軽い数小節。歌子が小さく囁《ささや》くだけで、 暗く閉じた劇場に僅かな光が挿し込む気配。勿論、 実際に光が射した訳ではない。ただそう錯覚してしまうほどに、 場の空気だけが変化しただけ。
 これが恐らく、彼女がいうところの“ライトリチューアル”なのだろう。

「プレリュードやリチューアルは空気とかふんいきが結構影響するから、 大体その場にいるみんなに影響がでます。あと、 使うにはオルタナティヴ……なんだったかな。とりあえず、 その歌に関わるような要素がないとダメ。楽器だと、えと──」

 歌子の視線がふらりと後ろに控えるオルゴール達に向く。
 彼らは〇〇と歌子、二対の視線を受けて、 各々が手にしている楽器を掲げてみせる。

「管楽器が炎」

 一つの人形が、手にした横笛を軽く吹く真似をし、

「打楽器が氷」

 一つの人形が、手元の金属片を叩き、

「弦楽器が光」

 一つの人形が、弓で弦を弾いて、

「打楽器が闇」

 一つの人形が、二つの小太鼓を続けて二度鳴らしてみせた。

「例外もあるけど、基本的にはこんな感じ。〇〇、判った?」

 成程……って、打楽器二つないか?

「氷のは金属で、闇のは木とか骨とか、 そういうのが原料の楽器で分かれてる。 覚えるときも、炎とか、光とか、 そういった力を使う練習を事前にしてないとダメだから、気をつけて」

 そして言い忘れたことは無いか、 と歌子は軽く小首を傾げて黙った後、 うんと頷いて〇〇の方へと向き直った。

「それじゃ、次。今話した曲の基本的な使い方についておしえます。 ほら〇〇、休憩終わり!」 立って立って、 と両手をばさばさ上下に振る歌子。そんな彼女の後ろでは、 オルゴール達がごそごそと何やら準備を始めているのが見える。
 いつもの流れ。講義が終わったから、次は実践、という事なのだろう。
 問題は、この実践が教えを受けた自分ではなく、 彼女達がこちらに向けて実践してくる、という点。

(……はぁ)

 思わず溜息が出るが、正直もう慣れてしまった。 〇〇は無言で立ち上がると、今から自分を襲う歌の力の奔流に備えて身構える。

「じゃ、行きます。ちゃんと見て、ちゃんと覚えてね?」

     ***

無人劇場の鳥姫が現れた!

歌子

─See you Next phase─




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