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鳥姫の巣 歌子3戦目 奮い立たせる力 |
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「よし。じゃあ、きょうは奏法の基本となる術式について教えていきます」 いつもの発声練習や、オルゴール達の力を借りての軽い演奏の基礎知識の指導。 その辺りを終えた後、 先生モードになった歌子は羽毛に覆われた手をわさわさ振りながら、 座り込んで休憩していた〇〇を見下ろす。 「歌の原理述は、前に言ったと思うけれど、 みかたやてきぜんぶに効果が出るものが多いの。 そして音楽の本質は、聴く人達をきもちよくさせるもの。 だから、歌の術式の一番基本的なものは、味方のちょーしを良くさせたりとか、 そういうのになる」 判る? と首を傾げてくる歌子に、〇〇は了解了解と二度頷き、 そして視線だけで続きを促す。 「ん。それで、〇〇が他の人たちと一緒に歌の事を頑張ってたら、 まず最初にスキルとして使えるようになるのが“バトルコンツェルト”だと思う。 バトルコンツェルトは──えーと、ちょっと弾いてみて?」 言って、歌子はくるりと背後を振り返る。その視線の先には、 巨大なオルゴールが三つ。 「りょうかいりょうかい」 「まかせてまかせて」 「きあいいれるぜー」 その蓋を開いて身を乗り出していた人形達が、 それぞれの楽器を構え直して一つの曲を弾き始める。 跳ねるピアノと深く伸びる弦楽器の音の狭間、所々で囀《 さえず》るような歌子のハミングが色を添える。 「バトルコンツェルトは、聴いてるとしゅうちゅうりょくを、 んーって高めてくれるスキル。今の曲は、 ホントは色んな人の音を合わせて曲を形にするんだけど、 歌の原理述のルールに乗る場合、そういうのから外れても大丈夫なの。 けーしきじゃなくて、それによってひっぱり出される効果が重要で、 それをバトルコンツェルトっていう名前にまとめるのが楽器のスキル──なんだって」 自分でも何を言っているのか判ってないのか、 首をかくかくと左右に傾げつつ話す歌子。〇〇は座り込んだまま、 それを何とか理解しようと渋い顔で唸る。 要するに、歌のスキルは奏でる曲、 歌によって導き出される効果自体に対して名前をつけて分類している。 だから、その効果を齎《もたら》す曲自体に然程縛りは無く、 使用者が自由に歌い、奏でることができる、といった処だろうか。 「大体あってる」 〇〇の呟きに、鳥姫は劇場に響く曲に合わせてゆるゆると身体を揺らしながら、 小さく頷いてみせる。 「バトルコンツェルトは“味方の集中力を高める”術式。だから、 〇〇が“味方の集中力を高める”ことが出来る曲が奏でられたその時、 〇〇はバトルコンツェルトを使いこなせるようになったって事になる」 ……成程、判ってきた。 別にコンツェルトという名がついていても、それに拘る必要は全く無いという事か。 「そういうこと。──じゃあ、他の曲も幾つか軽く聴いてみて。 みんな、お願いね」 「おけいおけい」 「まかせんしゃい」 「ばっちこーい」 それぞれのオルゴールから声が上がり、曲が柔らかな調子へと変化した。 身体の芯に溜まっていた疲れが失せていくような、 ぽかぽかと身体が温まっていく、そんな曲。 そして暫くの後、曲は更に変化。曲調は似ていながらも、 今度はゆったりと、心の奥に深く深く染み入り、 安らかな心地へと聴く者を誘うような、そんなメロディが〇〇の傍に横たわる。 「最初のが“ヒーリングソング”。次が“ユーフォリックメロディ”。 ヒーリングソングは怪我したときなんかに良く効くのをまとめた曲で、 ユーフォリックメロディは幸せな気分になって、心を落ち着かせてくれる曲の事。 そして最後──」 歌子の説明の声が途切れると同時に、また曲が変わった。 今度の曲は何処か不可思議な、少し定石を外したようなフレーズの重なり。 反響する旋律が組み合わさって更なる音を紡ぎ、びりびりと舞台や天幕、 周りに置かれたあらゆる物を震わせた。 「これが“レゾナンスファンタジア”。〇〇が身につけているオルタナティヴ──ええと、 なんか色々ヘンな名前のもの──を元気にさせて、術式を操る力をおおきくする歌。 友達に向かって歌う曲で、かんたんなのがこの四つ。 〇〇にちゃんと友達がいるなら、 この辺りの曲は結構直ぐ覚えられると思うけど……〇〇、覚えてる?」 どうかな? と首を傾げて訊ねてくる歌子。もし自分がここで否と答えた場合、 なんだか友達が全然いない寂しい奴みたいで非常に嫌だ。 「あんまり一度に色々やっても〇〇、覚えられないみたいだから…… とりあえずこの四曲くらいかな。みんな、ありがと」 歌子が手を上げると、オルゴール達の演奏がぴたりと止まった。 僅かな残響が、〇〇の耳奥に木霊して消える。その余韻を味わうように、 歌子は一度大きく深呼吸すると、真っ直ぐに〇〇を見た。 「じゃあ、続いて今の歌達の実際の使い方について教えます。ほら、立って?」 ぐい、と、もさもさした羽毛の手に掴まれ引っ張り上げられる。 (……しかし、教えるってまさか) 嫌な予感に顔を露骨にしかめる〇〇。 だが〇〇のそんな様子を気にした風もなく、 歌子はいつもの調子でむんと力強く頷くと、 「わたしとオルゴールがこーかてきな歌い方を見せるから、 〇〇はそれを直に聴いて、身体で味わってみて? とりあえず、耐えられたら合格」 わー、またこの流れか。 「うん。これならわたしもいっぱい歌えてきもちいいから。 〇〇も一緒に歌って、きもちよくなろ?」 いつも気持ち良くなってるのは、 こちらに向かって好き勝手に演奏している彼女達だけな気がするのだが。 そんな〇〇の嘆息混じりの呟きなど気にした風もなく、オルゴール達が楽器を構え、 そして歌子の胸が一瞬膨らんだ。 ──来るか。 身構えた〇〇の眼前。鳥姫の両の腕が広がり、 そして彼女の唇から力強い声が生まれた。 *** 無人劇場の鳥姫が現れた! ─See you Next phase─ |
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