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鳥姫の巣 歌子2戦目
歌いて奏でる力

「うん、〇〇の声もけっこう出てきたし」
 人の気配の絶えたステージ。 単書『天上樹ホール』の中でいつもの発声訓練を暫くやらされた後、 歌子はいつもと違う調子でうんと小さく一つ頷き、少し改まった調子で胸を張った。

「そろそろ、次。きょうは、歌の原理述について教えてこうとおもいます」
 その言葉に、〇〇は目を瞬かせる。“鬼腕”や“老師”が言っていた“原理述”。 確か、技を形式として記憶してどうこうという話だった気がするが……それが、歌にも存在するのか。

「歌だけじゃないよ? 声や、楽器で奏でる音楽全部。 ……えっと、がっきをかぎにしてけんいんし、ひきだされるちからのかたち?」

 何か凄い棒読みで説明された。

 自分で理解して喋ってる? と思わず問うと、むっと歌子の表情に憤慨の色。

「し、してる! で、でもっ、せつめいするは難しいのっ!」

 理解はしていても、それを言葉に直して話すのは難しい。 その辺りの理屈は判らないではないが。

「こ、こほん。で、ええと、今日は、歌の原理述── つまり楽器のスキルのとくちょうについて、おはなししようと思います」

 歌子は咳払いを一つ置いて、またちょっと偉そうな声を作って話し始める。

「楽器のスキルは、せーしきには原理述奏法ともいいます。 主に心──せーしんに影響をあたえるものが多くて、 あと範囲が広いものが多いです。歌を誰か一人にだけ届かせるって、 結構大変だから。もちろん、そういう標的を絞ったスキルもあるけれど、 あんまり数は多くない」

 まぁ、納得の出来る話だ。声や音にある程度の方向を持たせる事は出来るが、 完全に聞こえる対象を絞るのは難しい。

「効果は、味方をまとめて、おーって元気にさせたりとか、 怪我を治したりとかそういうのと、敵をまとめて、 うーんってしおれさせたりとか、そういうのに分かれてる。 敵と味方と、両方に影響が出るスキルも多いから、 ちゃんと考えて使わないと、友達のめーわくになっちゃうから気をつけて」

 例えば、聞く者全てを眠らせる歌。そんなものを戦闘時、 仲間に何も報せずに使ってしまえば、どんな惨事になるかは自明だ。 楽器のスキルを使う場合は、その辺りをしっかり考えて使う必要がある、 といった処か。

「あと、攻撃するスキルはあんまりない。あっても、 ちょっと使いづらいのが多いと思う。 なんか身体の無い奴らにだけダメージを与える歌とか、 そんなの。でも、音の力は防ぐのがむずかしいから、 ちゃんと考えて歌えば、ちゃんと使えると思う。 ええと、前に鬼腕か老師かが言ってた。 『混じりのない歌の力は、反射にも障壁にも影響を受けない』んだって」

 確か反射は、四つの属性──炎熱、冷気、光、闇。 これらの力を一度だけ跳ね返すもので、 障壁は遠隔物理攻撃を遮るものだったか。 つまり、彼女の言う“音の力”とやらは、そのどちらにも属さない力である、 という事なのだろう。

「楽器の原理述については、こんな処かな。……〇〇、大体判った?」

「…………」

 どうだろう。問われて、〇〇は眉を寄せて小さく首を傾げる。

 判ったような、判らなかったような。 全く意味不明だったという訳ではないのだが、説明の所々に、 「おー」だの「うーん」だの酷く抽象的な表現が混ざっていて、 素直に頷きがたい。

 〇〇の微妙な反応に、歌子の表情もむーんと曇った。

「う、ううーん……、あっ! それじゃ、わたしが今から一通り見せてあげる!!」

 えー、それってつまり。

「歌合戦! きょうからはちゃんとオルゴール達にも手伝ってもらうから、期待して!」

 しないよ。


歌子


─See you next phase─

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