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鳥姫の巣 歌子1戦目

【備考】
歌をべんきょうするを選択

 ──天上樹ホール。
 それが、歌子が所持する単書の題名らしい。

“大崩壊”以前に実在したという大劇場を扱ったフィクション小説を単書化したもので、 物語の舞台は最初から最後まで、その劇場の中に限られている。
 故に栞を使って本の中へと進入した場合、 挿入者が出現する場所はその天上樹ホールの中以外に有り得ない。

 時刻は真夜中。
 ホールの所々に設けられた照明は完全に落とされているが、 暗幕の取り外された大天窓から満月の光が煌々と射し込み、 舞台の上から暗闇という要素を払っている。
 月明かりの下には、幾つかの人影があった。

「大体、安定してきたかな?」

 その影の一つである歌子がそう呟いて、羽毛だらけの手を動かして、 ○○に止めるよう促す。
 ○○は漸くかと声を張るのを中断。僅かに身を折ると、深々と息をついた。 この単書に入ってから、ずっと発声の練習をさせられていたのだ。
 ○○がそうして休んでいると、ホールの中を緩やかに流れていた音が止まる。 視線を移せば、歌子が舞台の隅に並べられた巨大なオルゴールの一つを手で止めていた。

「やめちゃうの? やめちゃうの?」

「おしまい? おしまい?」

「つまんない。つまんない」

 美しい装飾が施された箱の中からは、楽器を構えた人形達が顔を出していて、 彼らは口々に抗議を漏らす。
 先程まで、○○の発声の手助けのために後ろで音を奏でていてくれていたのが彼らだ。
 このオルゴール達は、この単書に由来する存在ではなく、 歌子が箱舟から単書の中へと持ち込んだものである。
 見た目は巨大なオルゴールとその飾りとなる人形、といった感じだが、 実際はこの自在に音を奏でる人形達と、彼らを仕舞うための箱、 という組み合わせになっているらしい。箱の脇に取り付けられた捩子巻きも、 この人形達を動かすためのものだとか。

「もうおしまい。また今度ね」

「はーい」

「わかったー」

「しかたないなー」

 歌子の言葉に、人形達は不満げな言葉を残しながらも大人しく箱の中へと引っ込んでいく。 全員が身を屈めたのを確認して、歌子は箱の蓋をぱたんと閉じた。
 そして彼女は○○の方へと振り返ると、

「じゃあ、そろそろ本番。○○がちゃんと声を使えるようになったか。それを、見てあげる」

 その言葉に、何? と慌てて顔を上げる○○。
 そろそろ本番と言われても、なら今までは前座だったとでも言うのか。

(それ以前に……)

 今から何をさせる気だ?
 訝しげな色を隠さずそう問えば、歌子は口元を翼の先で隠しながらかくりと首を捻って、

「……歌合戦? わたしも歌うから、○○も歌ってみて。それで競争」

 いや待て。自分と歌子では勝負になる訳が無い。
 慌ててそう言うが、歌子はぽんと自分の胸に手を当てて、

「大丈夫。ちゃんと、初心者くらいのレベルに合わせるから」

 それならば……いやいや。そもそも、歌で競争と言われてもどうやればいいのか。 それ以前に、声を使えるようになったか見てあげる?

「最初はただ歌って凌ぐだけでいい。ある程度慣れてきたら、 相手に力を届かせるようなスキルも使えるようになると思うから、 それ使ってみて。あとは、拍子を取るもの──楽器が無いなら、これ使って」

 ひょいと投げ寄越されたものを慌てて受け取る。玩具のタクトだった。

「──それじゃ、行くね? ちゃんと勝てたら、次のステップに進も」

 告げて、歌子が僅かに胸を膨らませ、そして一旦止めて○○を見る。

 ……仕方ない。

 勝てる気はしないが、ちゃんと最後までやり通せば良い経験にもなるだろう。
 ○○は受け取った玩具を握り締めつつ、先程までの練習の成果を発揮するべく、 腹深くに空気を溜め込むイメージで大きく息を吸った。

☆○○は玩具のタクトを手に入れた!

     ***

無人劇場の鳥姫が現れた!

鳥姫


─See you Next phase─

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