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鳥姫の巣 歌子5戦目 全て平等なる力 |
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「ええと、今回はどうしよう」 いつもの発声練習等の後の休憩時間。 今日は一体どんな歌拷問がと戦々恐々しながら待っていた訳だが、 肝心の先生殿はちょっと途方に暮れたような表情でそんな事をのたまう。 「ホントはね、 そろそろじゅんすいに力をぶつけるタイプの曲をお話ししようかと思ってたんだけど……まだちょっと〇〇の声、しっかりでてないから。も少し後にしようかなって」 「…………」 力をぶつけるとか、何だか凄く危険な話な気がするが、 延期になってくれたのならそれに越したことは無い。 臭い物には蓋、とその部分には触れずに流すとして──となると、 今日はこれからどうするのだろうか。 このまま今日の勉強は終わり、としてくれるのならとても嬉しいのだが、「じゃあ、今日はちょっと扱いの複雑なスキルについて」 彼女の返答は見事に〇〇の期待を裏切るもの。 がっくりと肩を落とし、講義が終わった後の流れを想像して顔を歪ませる〇〇に対して、歌子はいつものように先生モード。 「“ヴェイパートレイル”、“フォトケミカルスモッグ”、“エンジェリックヴォイス”、“コールフロムヘル”。 この辺りの曲は、どちらかというと歌というより“じゅつしき” っていったほうがいいかも……?」 が、そのモードは数秒と持たなかった。語尾が何故か上がり、 何処かこちらに訊ねるような視線を送ってくる。表情から察するに、 自分の言葉が伝わっているのかどうか不安らしい。 (う、ううーん) 少し言ってる事が判りづらいが……要するに、音楽としての部分より、 魔法としての部分のが大きい、という意味だろうか。 「そう、そう。一応楽器は使うけど」 〇〇が何とか答えると、歌子は自分の話がちゃんと伝わってる事が判って、 うんうんと嬉しそうに頷く。そこまで嬉しそうだと、 見ているこっちが何だか気恥ずかしくなってくる。 「こうかは、ヴェイパートレイルがなんか飛んでくるやつ、 フォトケミカルスモッグがまほうみたいなのをなんとかしてくれるモノをまとめたもの。 エンジェリックヴォイスとコールフロムヘルは、それぞれびゅーんて飛ばしてくれるのと、 べたーんと地面に押しつけられるのの違い」 びゅーんだのべたーんだのという言葉と共に、 歌子の身体がそれを表現するようにわさわさと動く。 飛んだり跳ねたりする拍子に羽毛が派手に飛び散って、結構煩わしい。 「他には、“ピースフルララバイ”とか“キャンセレイション”とかある。 ピースフルララバイは子守唄で、聴いてるとすごくねむくなるの。 キャンセレイションは、なんか呪いとか、そういうのを全部無くしちゃう。 ヴェイパートレイルとかもそうだけど、 今言ったスキルはその場にいるみんなに全部届くように歌うから、 使うときはちゃんとその事を考えて使わないとダメ。あと……」 まだあるのか。 「うん。初歩の歌、バトルコンツェルトやユーフォリックメロディとかは結構簡単に覚えられるけど、 ヴェイパートレイルとかコールフロムヘル──それに前に話したプレリュードとかは 結構むずかしいから、覚えるのは結構たいへん。 ちゃんと聴いてくれる仲間がいるときとか、ピンチなときとか、 そういう風に状況が整わないと、上手く〇〇の“栞”と関連付けができないかも」 使う時も厄介なら、覚えるのも厄介と。 正直、そんなに面倒な曲ならば、 強いて覚える必要も無い気がするのは気のせいだろうか。 思った事をそのまま伝えると、 「で、でもっ、歌えると楽しいからっ!」 などと、何やらもこもこした握り拳まで造って力説してくるが、 楽しいからとか言われても正直困る。 「じゃあ、いつもみたいにわたしが歌う! それを聴いたら、 きっと〇〇も使いたくなると思うっ!」 それは無いだろ、と突っ込む前に、 歌子はとんと後ろに大きく羽ばたいて移動すると、 オルゴールの開いた蓋の上に一脚で器用に留まって、深く深く息を吸う。 それはもう何度も見ている、彼女が“気を入れた”声を発する前動作。 「それじゃ──行くね?」 *** 無人劇場の鳥姫が現れた! ─See you Next phase─ |
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