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エルアーク⇒ラストキャンパス

【備考】
エルアークから2回目以降ラストキャンパスへ移動する際のリザルト

 群書に栞を挿した瞬間、己という存在そのものが箱舟の上から消え去り、 再構成されたそれが本の中へと記し移される。
 理解など到底及ぶべくもない、遠い理に支えられた“仮記名”。
 それはもはや人の扱いうる領域を踏み越えたもの――言うなら神業だと、初めはそう思った。 己の常識を遥かに超えた技術に畏怖さえも覚えたものだ

 だが、どうやら人というのはそんな“神業”にさえ慣れてしまうことができるようだ。
 今では書に入るために記名をするという事は、 部屋に入るために扉を開けるという事と同程度の感覚に成り下がっていた。
 記名においては自己の再構成に伴う意識の不連続性という問題があるのだが、 それさえもすぐに順応した。
 要は眠りに落ちるのと――あるいは夢から覚めるのと、同じことだ。書を出入りするまでもなく、 人は常日頃から不連続な意識の中で自己を保つことができている。
 一旦慣れてしまえば、 栞を介した存在概念の分解と再構成の過程もはっきりと知覚するようなことは無くなった。
 幾度か、意識が消える間際に曖昧模糊《あいまいもこ》とした暗闇を見たように思うが―― ともかく明瞭な記憶としては残らない。

 栞を挿した○○が次に目を開いた時、その身は既に目指す世界の中に在った。
 眼前には夜の街並み。初めてここを訪れたときに降り立ったのと同じ路地裏に立っていた。

「またオマエサンか。紛らわしいヤツだな。メリルに見つかる前に寄宿舎に帰れヨ」

 そこには、○○がここに現れるのが分かっていたかのように、ペーターが待ち構えていた。


─End of Scene─

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