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朱の海辺

禁領:フリスコー高地で敗北後ジルガ・ジルガ2度目の記入
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 記名時独特の感覚が失せる。瞼の裏が赤く滲んでいる。
 目を開けば、そこに広がるのは黄昏が迫る海の縁だった。

「やぁ、また来たね」

 声が掛かる。
 振り向けば、フード姿の影。名は確か、“隠居”と名乗っていたか。

「正解だ。はは、ちゃんと思い出せるか。私の細工は働いているようで結構結構」

 影から奇妙な調子の笑い声が暫く響いて、そして細く息をつく音。

「まぁ、思い出せたところで意味は無いがね。毎度の事だが、 お前が来る場所はここじゃない。もう、どうすればいいかは判っているだろ。 その為に、ここでの記憶はここでのみ蘇るようにしたんだから」

 覚えている。
 海の一角、そこへ足を踏み入れれば、この身は海中に沈み込み、 そして目覚めれば“ジルガ・ジルガ”へと辿り着いている事だろう。

 だが──。

「おっと。私に何かを聞いても、答える気はないからあしからず」

 〇〇の視線の意味を敏感に察して、影が明確に線を引いてくる。

「良いからほら、さっさとこんなところ通り過ぎて行け。 お前にはやる事があるだろう? ここには何も無い。ここは何でも無い。 お前が得る物も、私が得る物も。何者もなく、何物もない、 はみ出しあぶれたものが辿り着く、侘しい離れだよ」

 言って、影はこちらから視線を外すと、手元にある細い冊子に面を向ける。
 それからはもう、〇〇の主が何度呼びかけても反応は無く、 浅瀬を歩いて彼の座る椅子に近づこうとしても、どういう理屈によるものか、 幾ら歩こうが距離を一切詰める事が出来なくなっていた。

「…………」

 一度の嘆息。
 それを置いて気分を切り替え、〇〇は椅子に座る隠居から視線を切る。
 この場は恐らく、彼の人物が絶対的な力を持つ場所。隠居が拒めば、 近寄る事すらかなわない。
 ここは大人しく従うしかないのだろう。〇〇はそう割り切って、 この朱の世界から立ち去るべく海の一角を目指して歩く。

 ──そして至った瞬間。
 海の底、足元の感覚が失せて、身体が一気に沈み込む。
 朱の色に染まる海の中、視界が赤く、白く、暗く染まり、そして一瞬の断絶の後。

     ***

「──ッ!!」

 目を覚ます。眩んでいた視界が元に戻る。
 辺りを見回し、今居る場所を確認。いつもの街の、壁の影。 “ジルガ・ジルガ”での特徴の一つだ。顕現の位置はいつも変わらない。
 暫く身動きを取らずに深呼吸を繰り返し、 意識と四肢の感覚がはっきりとしてくるのを待った。
 その間に、これからの行動も考える。

 まずやるべき事は──そう、“宿木”に所属するための試験、“試し”の達成だ。
 エンダー達を探した後、禁領の一つであるフリスコー高地の外れへと向かわなければ。

─See you Next phase─






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