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街道にて、少女駆ける

【備考】
テンボス北街道→ゼネラルロッツ
     ***

 ゼネラルロッツへ向けて街道を歩いていると、 前方から一人の少女が駆けて来るのが目に留まった。

 このご時世、ただの一人旅なら珍しくはないが、街道を全力疾走する少女というのは中々お目にかかれない。
 街着ではなく旅装束だから、家出だのなんだのという話ではなさそうだが……。

 好奇の目で見守っていると、彼女は息せき切って〇〇の傍らに駆け寄ってきた。

「良かった! 話を聞いて下さい!」

 そう言って〇〇を見上げた少女は、年の頃十三、四と言ったところだろうか。
 セミショートの金髪はところどころクセッ毛で、活発そうな翡翠色の瞳は野生の猫を連想させた。

 装備の質は冒険者としてはお粗末で、その身なりから察するにあまり裕福では無さそうだ。
 ただし、両手につけた妙な模様のガントレットだけは異彩を放っていた。そこらの商店に無いのは勿論、 戦利品の類としても今まで見たことがない代物だ。



 少女は弾んだ息を整えながら背後を振り返り、 自分の来た方向を指差した。

「私、悪い男達に狙われているんです!」

 彼女が示した先には、確かに追っ手と思しき三人の男の走り来る姿があった。
 男達はすぐにバタバタと聞き苦しい足音を立てて駆けつけ、〇〇の前で立ち止まる。

「はぁ、はぁ、やっと……追いついたぞ。そろそろ、 鬼ごっこは終わりだろ?」

 肩で息をしながら、男の一人が問いかけた。
 少女の言い草にはやや芝居がかっている感があったが、 追われていることは確かなようだ。

 少女は男の言葉には答えず、半ば身を隠すようにして〇〇の背後に回った。
 自然、盾にされた〇〇は男達三人と対峙する形になる。

「何だ、お前? 怪我したくなかったら脇にどいてな」

 男は訝しげに〇〇を見据え、顎で街道の脇を指し示した。

 彼らも最低限の装備は携えているようだが、 先ほどの無様な足音や呼吸の荒れ方を見るに、 腕の程度は高が知れている。
 多少修練を積んだ者なら、 この程度の連中を退けるぐらいは造作も無いだろう。
 事情は良く判らないが、ここは少女を助けておくべきか。

「かかってくれば良いじゃん! ま、この人めっちゃ強いから、 あんたらなんかボッコボコのギッタンギッタンにしてロレーヌ川の底に沈めちゃうけどね! 多分」

 少女が〇〇の後ろで舌を出してみせた。さっきまでと随分口調が違っている。

「良いだろう」

 と、一番後ろに控えていた男が前に出た。
 三人の中では一番腕が立ちそうで、さしずめ彼らのリーダー格といったところか。

「だがその前に、あんた本当にその娘のお仲間なのか?  っていうか、そいつは盗人だぞ。そして、俺達は被害者だ」

(ん? そうなのか)

 そういうことなら話は別だ。少女の方を振り返ると、 彼女は慌てて否定した。

「ちょちょちょ、何言ってんの! デタラメよ!  惑わされちゃ駄目よ! こんな可憐な少女が盗みなんて働くわけないでしょ! よく見て、あいつらの悪そうなツラを!」

「ふざけるな! ツラは関係ねーだろが!」

(ふむ……)

 確かに関係ない――と、言いたいところだが、 どういう訳か悪人というのは結構顔で判ることが多い。
 そして、確かに連中はどいつもこいつも悪人面だった。

 さて……どうしたものだろう?

     ***

“悪い男達”(結構強そう)が現れた!




─See you Next phase─




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