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贖罪



真紅の魔女

カルミネラ

 戦闘に勝利した。

 モルトの腕からくりだされた鋭い攻撃が、 紅色のドレスの袖口を斬り裂いた。

「――!」

 右腕から同色の鮮血がほとばしり、魔女はひざをつく。
 燃える真紅の衣をまとった魔女は、 みずからの視覚が信じられぬといった様子で腕を押さえた。

「――どうやら本当に、“恐怖”を克服したようね」

 カルミネラの口調は、不思議と平静だった。いぶかりつつ、 モルトはひとつ歩をつめた。

「危ない!」

 刹那、吹き抜けの礼拝堂に、エルニノの叫びが響いた。
 うずくまっていた魔女の弓銃が不意に発射され、 側転でよける。毒針が壁に突きささった。

「――そうまでして、共和国を支配したいのか?」

 カルミネラはその問いにはこたえず不敵な微笑を浮かべた。

「この世界を、ひどく窮屈な場所だと感じたことはない?」

「窮屈?」

 唐突な問いに眉をつり上げる。

「人間はなぜ、空を自由に飛べないのか?  生命にあたえられた時間は、なぜかくも短いのか?  存在はなぜ、かくも脆弱な肉体に閉じこめられているのか――」

 魔女は立ちあがり、ドーム状の天井をあおいだ。

「不死の研究に手を染めたのは、端緒にすぎなかったわ。 不死は目的ではなく、手段――さらなる高みをめざすための、ね」

「高み?」

「ええ、至高なるもの――すなわち“神”になること」

 カルミネラは当然のことのように言い放ち、4人は息を飲んだ。

「ストラルドブラグも、いわばその副産物。研究の噂を聞きつけて、 俗物たちがむらがってきたわ。そこに立つ老人も、そのひとり」

 紅色の焔を宿した瞳が聖公シエロを一瞥する。

「富も権力も、それが必要だから利用させてもらっただけ―― 人々がどうしてそんなものを欲しがるのか、理解に苦しむわ」

「どんな俗物かと思ってたが」

 満身創痍のリュウシンが、カルミネラに言葉を投げた。

「案外、意味のわかる話をするじゃねえか」

「そうね」

 紅衣の薬師が目を細めて、4人をみまわした。

「あなたたちよりも、わたしの方がすこしばかり、 利己的なだけかもしれないわ」

「フン。それで、神になる算段はついたのか?」

「あとひと息というところね」

 紅いくちびるから、人工的な声音が発せられる。 首の動きにあわせて、かすかに銀髪が揺れた。

「カルミネラ。さっき、生きのこるのは正しい者ではなく、 より強き者だと言ったな」

 モルトがまたひとつ歩をつめた。 カルミネラは後退し黒檀の祭壇に片手をついた。

「だがオレは、それが偽りだと証明しなければならない」

「……天の御前で?」

「ちがう。未来を託すべき者の――エルニノの前で」

 背後に目をやる。
“救世主”と呼ばれた少年は、レモン色の瞳に焼き付けるように、 こちらをじっとみつめている。

 セルリアが無言で頷いた。
 モルトはふたたび紅衣の魔女と対峙した。

「そう――」

 魔女が腰を回転させ、モルトに凛とむきなおった。

「――試してみる?」

 カルミネラの左手から、朱色の粉がぱらぱらとこぼれ出る。
 同時に、礼拝堂の自動式パイプオルガンが、 短音階の聖楽を荘厳にかなではじめた。

-----FLASH挿入-----
以下画像はFLASH OFF時

カルミネラ

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「モルト!」

 セルリアが絶叫する。
 モルトの目の前で、魔女は左手をさしあげ、朱色の粉をまいた。
 真紅のドレスが燃えあがり、文字どおり紅蓮の焔となった。

「――!?」

 強烈な光量に、セルリアたちは腕で目を覆う。
 自動オルガンの演奏がつづく。
 モルトは人でないものに変貌するカルミネラの姿を、静かにみつめた。


カルミネラ

 赤色に燃えさかる人工めいた焔のなか――なにかがうごめいた。
 ……それは昆虫の、“羽化”に似た過程とも映った。
 大理石の床に伏せた魔女の背中から、 緋色の翼がゆっくりと広がってゆく。翼が動くたび、 その端が焔の輪舞をまう。

「――なっ!?」

「……て、天使!?」

 大理石の床から身をおこした真紅の魔女カルミネラは、 ゆらゆらと宙に浮いていた。
 その肉体は半透明で、焔との明確な境界を失っていた。
 カルミネラは最後の錬金術で、みずからの姿を神に近きもの―― 焔の天使へとかえたのだった。

「みずからをアストラル化して――半神と化したというのか?」

 本能が発する怖気をふりはらうように、首を横にふる。

「あるいは“本来の姿”か――」

 リュウシンが呆然とつぶやくのを、モルトは耳にとめた。
 自動オルガンは、信仰に殉じたいにしえの聖人の受難曲をかなでつづけていた。

焔天使(たぶん強そう)が現れた!

カルミネラ

―See you Next phase―






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