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藪谷(結構強そう) [集中審議]藪谷はヒューマノイドの可能性が高い 戦闘に勝利した。 「勝った……。勝ったぞ、ちくしょー!」 トモキが肩で息をしながら、吐き出すようにしてそう言った。 床に転がり、ぴくりともしない、藪谷であった生き物から目を背け、あなたはつぶやいた。 「そいつは……、彼女は、藪谷だった……。人間だったんだぞ。 それを、オレたちは……!」 「なに、甘ったれたこと言ってる」 あなたは顔を上げると、声のした方を見やった。 そこには、張り子の犬のようなものが立っていた。 それはじっと、無表情な顔で、あなたの視線を受け止めていた。 自分の目にしているものが何なのかいまひとつ理解できず、あなたはしばしの間、固まっていた。 と、それが口を開いた。 「戦って生き抜くだけの意志がないなら、ヤツらに喰われちまえ。 さっさと殺されちまえ。それだけの話だ」 「は、張り子の犬が、しゃべった!? な、何なんだ、お前!?」 と、トモキが驚きの声を上げた。 それはトモキの方に顔を向けると、 「俺か? 俺は、ドクター・ヘルマーチン。蒼の相棒だ。 科学者であり、発明家でもある。蒼の銃を改良してやったのも、 俺だ」 どうやら生き物らしきその物体を見つめるあなたの両目が、 丸くなった。 「蒼の相棒だって?」 「ああ、そうだ。今回はちょっと用事があって、 蒼とは別行動だったんだ。しくじったな。朱鳥には油断するな、 とあれほど言っといたんだが……」 「蒼は、いま……?」 「心配するな、無事だ。なんだかんだ言って朱鳥のヤツも、 蒼を失いたくはないんだ。蒼は特別だからな。そう簡単に、 蒼のことをあきらめたりはしない」 「よかった……」 ヘルマーチンの話を聞いて、あなたはひとまず安心する。 「まあ、そんなわけでだ、お前たち、ここはひとつちからを貸せ。 朱鳥は、この学園のどこかにいる。蒼も一緒だ」 「本当なのか、その話?」 とトモキが、うさんくさそうにヘルマーチンを見やる。 「ああ、間違いない。次元の境界がもっとも薄くなっているのが、 この学校の周辺らしい。それで連中の一部が、 この学校に集まり出しているんだ。だが、ともかく、 まずは蒼を見つけ出せ」 「待てよ! 冗談じゃない。なんだってオレたちが、 協力しなきゃならないんだよ?」 「朱鳥のヤツを止めなけりゃ、この街は終わりだからだ。いや、 この街だけじゃない。あいつはこの世界と異界とを、 完全にひとつにしてしまうぞ。そんなことになったら、 事態はこんなもんじゃすまなくなる」 「そんなこと言われてもなあ……」 と、トモキは不服そうに顔をしかめる。 「俺は頭脳派であって肉体派じゃない。残念だが、 俺一人のちからじゃムリなんだ」 ヘルマーチンは、あなたたちの顔を交互に見やりながら、続けた。 「いいか、よく聞け。このまま放っておけば、 お前たちの家族や友人も、おしまいだ。連中のエサになるか、 あの教師と同じ運命をたどる破目になる。化け物の仲間になるんだ。 どこにも逃げ場はない。いずれ、ヤツらに追い詰められて、 それでアウトだ。わからないのか? 時間がたてばたつほど、 ヤツらは増殖してゆく。こうしてる間も、 お前たち人間は不利になって行くだけなんだぞ」 「……わかった」 と、あなたは腕をほどいて、ヘルマーチンに向き直った。 「協力するよ、あんたに。蒼を助け出そう」 「おい、〇〇〇! 本気か?」 「ああ、本気だ。この、ドクターとかの言うとおりだ。 オレたちふたりで、なんとかここから逃げ出せたとしても、 それでどうなる? この街が異界の一部になってしまったら、 ヤツらはここから周囲の世界に侵略を始めるだろう。そうなったら、 どうなる? 警察や自衛隊に何ができる? 相手は、 不死の化け物なんだぞ?」 「それは……」 と、トモキは声を詰まらせた。 「いまここで、誰かがヤツらを止めなきゃならないんだ。 そのためには、オレたちだけじゃダメだ。蒼だ。おそらく蒼が、 鍵なんだ。なんとしても、蒼を助け出さないと……」 「そういうことだ。そっちの単細胞よりは、 いくらかましな頭を持ってるみたいだな、お前は」 「誰が単細胞だよ!?」 あなたは、にらみ合うふたりを放っておいて、 一際大きな教頭のデスクに向かった。 デスクの向こう側にまわり、引き出しに手をかける。 ダメだ、やはり鍵がかかっている。 「くそッ」 引き出しをガチャガチャ言わせているあなたに気づき、 トモキとヘルマーチンがにらみ合いを中断する。 「どうした? 何やってるんだ?」 「マスター・キーだ。学校のマスター・キーは教頭が保管してる。たぶん、 この引き出しだと思うんだが……」 「ああ、あれか。用務員のおやじと、教頭が持ってるんだっけか」 「用務員が今どんな状態なのか、確かめに行きたくはないからな」 「よし、まかせろ」 と、ヘルマーチンがぴょんと机の上に飛びのった。 下をのぞき込むようにして、引き出しの鍵穴にひげをさしこむと、 器用に首を振る。 ほどなく、カチャリとロックの解けた音がした。 「へえ、やるもんだな」 と、思わずトモキは感心の声をもらした。 「くだらん。こんな仕掛けなど、稚児の玩具にも等しい」 引き出しを開けると、はたしてそこには赤いプラスチックのプレートの付いたキーがあった。 「これだな。これで校内を自由に動けるぞ」 と、キーに手をのばしたあなたに、トモキが問いかけた。 「ほんとに、やるのか?」 「ああ、後にはひけない。やるしかない」 「ちッ、こっちの頼みの綱は、グール女に張子の犬だけかよ……。 なんとも頼もしい限りだな、まったく」 とトモキは、明後日の方を向いて首を振ってから、 「で、どこから探すんだよ?」 ─End of Scene─ 次回行動選択 まだ決めていない 風まかせ 体育館へ 図書室へ 保健室へ 教室へ 2Fへ エルアークへ戻りたい |
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