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食堂にて


 寄宿舎に隣接し、床面積は広いが1 階建ての木造の建物がある。そこが寄 宿舎で寝起きする生徒の為の食堂だ。
 ここで生徒は朝晩一回ずつ食事がで きるのだが、その量はあまり多くはな いし、質もあまり良いとは言えないし 、味も悪くはないが良くもない。
 これでは足りないという生徒の為に テイクアウトも用意されているのだが、そち らは有料である。どうしてもうまい物 が食べたい生徒は自分で材料を調達し 、自分で調理しているようだ。
 そして、弁当を作ってくれるよう な相手がいる者は、ここでは既に勝 者であり、敗者はそれを横目に係員 の手によって食材の料金を搾取され 、自ら茹でて、涙で味付けしたゆで 卵をかじり、明日の勝利を願うので ある。
 ○○が食事をしながら、ふと横に 目をやると少し離れた隅の方で、一 人で食事をしているメリルの姿が見えた。
 前に会った時と全く同じ服装で 、肉団子入りスープを食べている。

 この前の事も含め聞きたいこと が色々あったので、○○はメリルの 向かい側の席へと移動する。
 メリルはちらりと○○の方を見るが それっきり。後は全くの知らん顔で ある。黙々とスープから肉団子を見 つけ出し、フォークで突き刺して口へ 運んでいる。
 ○○が、この前の事だけど、 と言いかけたその瞬間、○○ の目の前にフォークが突きつけられた。

「ここでその話はするな」

 口には出さなかったが、やや端の吊《 つ》り上った瞼《まぶた》の下の金色《 こんじき》の瞳が明らかにそう物語って いた。
 その刹那、その目は今までのそれとは 違っていて。どちらかと言えば獲物を睨 む獣のそれだった。

「そんなコワい顔するなって。せっかく のビボウが台無しダロ」

 いきなり、○○の頭にずしりとかかる重量。
 そして、そこに向かって真上から 振り下ろされるメリルのフォーク。

 もし、このまま上に乗っている モノがフォークを避けたら……
 ○○は咄嗟《とっさ》に全力で身体を起こす。
 眼前の机に突き刺さるフォーク。

 危なかった……
 しかし、周囲の視線は見事にあちこ ちから突き刺さっていた。

「オラオラ、見世物じゃネーゾ! 見るなら金出しナ!」

 再び○○の頭の上に乗ったペーター が両手を振り回して衆目を散らす。 重みで首がガクガクする。
 良くあることなのか、同情されて いるのか、皆すぐにそれぞれの食事 や会話に戻っていく。
 それにしても、こんなウサギがいて も誰もなんとも思わないようだ。こ こではそれほど珍しくないのか。

「デ、オマエサンは学園生活をエンジョイしてるカイ?」

 机の上に降りてきたペーターが、くるり と回って○○を指差す。
 慣れたかといえば慣れたが、エンジョイ してるかと言われると返答に困ってし まう。

「マ、一人じゃ色々大変ダロ。 ここにくれば誰かしら暇そうに してるから、そういう奴を捕ま えて実地訓練にでも行くんだナ 。あそこなら簡単に二人きり になれるゾ」

 机の上をテクテク歩いていき、机 の端までくるとくねくねと妙な 動きをするウサギ。

「オオット! こんなところに暇そう な独り者の乙女ガ!」

 くるくる回ってからぴたっと止まり、メリルを指差すペーター。
 メリルはそれを払い除け。

「話があるから一緒に訓練に行くぞ」

 それだけ言うとさっさと一人で食器を 片付け、食堂を出て行ってしまった。

「そうそう、メリルはサボりすぎで未だに1 年生ダ。行くならレベル1ダナ。ケケケ」

 ペーターもその後に続く。
 ○○がとりあえず食べかけの食事を 済ませてしまおうとかきこんでいると、

「お前、どうやってあいつに取り入ったんだ?」

 今までの経緯を見ていた他の生 徒の何人かが詰め寄ってきた。
 何のことかと聞いてみると、メリル は近寄りがたい雰囲気があり、たま に声をかけてもことごとく無視され てしまうのだそうだ。あの容姿だ、 男子生徒には人気があるのだろう。 また、クールな感じが女子生徒にも人 気が高いらしい。そんなわけで、今 までメリルとまともに話ができた者は 一人もいなかったということのようだ。

 ついでにペーターの事も聞いてみる。
 ペーターはいつも必ずメリルと一緒に いるメリルのペットということになって いるようだ。で、他にもああいっ た機械ウサギがいるのかと聞いてみ たが、意外にも返ってきた答えは 、この辺では他には見たことない というものだった。しかし、その ことについて疑問に思ったことは ないという。
 ますますもって怪しいウサギである 。用心するに越したことはないだろ う。しかし、今は情報が欲しい。○ ○はしばらく一緒に行動してみるこ とにした。


─End of Scene─


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