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サンロード




[集中審議]蒼はアンデッドの可能性が高い


戦闘省略

 戦闘に勝利した。

 攻撃を受けて、蒼は膝をついた。

「くッ……」

 あなたは身構えたまま、蒼の様子をうかがった。
 のびていた鋭い牙や爪が、もとどおり短くなってゆく。 険しかった表情が、以前の少女の顔にもどる。

「蒼……?」

 あなたはゆっくりと蒼に近づいていった。
 蒼の肩から、ふっとちからが抜けた。両目を閉じると、 顔を伏せて、蒼は答えた。

「もう、大丈夫……。いつもの、わたし」

 あなたはほっと息を吐き、警戒を解いた。
 拾って持ってきていた彼女のサングラスを、 うつむいた蒼の前にそっと差し出した。
 蒼は、こくりと小さくうなずくと、それを受け取った。
 夜の底のような、ふたつの暗い目がグラスの向こうに再び隠される。
 彼女は床に座り込むと、膝を抱えた。

「ケガして、体の自己修復が始まると、全身が熱くなって、 渇きと飢えが抑えきれなくなるんだ……。 本来の自分は、 どこか遠いところに押しこめられたような感じになって」
「蒼も、向こうの世界から来たのか?」
「ちがう。わたしは人間だ……、人間だったと言えばいいのかな。 グールに喰われると、ヤツらに寄生したウィルスに感染して、 死からよみがえる。ヤツらと同類になってしまう……。 生きているのとは違う。死んでいるけど動いてる、 といった方が近い」

 蒼は、ひざの間にあごを埋めた。

「わたしが追っているのは、朱鳥(すちょう)……、 レッド・スワンと呼ばれるグールだ。以前はわたしの恋人だった……。 そして今は、怪物」
「蒼の、恋人だった?」

 彼女は小さくうなずいた。

「わたしがグール化した時に、彼も一緒にいた。 彼はこころまで、完全に奴らの一員になってしまった……」
「怪物は、ひどいな、蒼」

 頭上から声が降ってきて、あなたたち三人はさっと顔を上げた。
 透明なトンネルの上から、男が見下ろしていた。

「朱鳥!?」

 男はニヤリと笑った。



「それに一方的に、元カレにされても困る。 今でも僕らは恋人同士だろう? ちょっとした意見の相違があっただけで」
「ふざけるな!」

 と、すでに立ち上がっていた蒼は銃を構えた。

「おまえは、もうヤツらの一員だ。怪物と同類になった」
「まるで僕を裏切り者のように言うが、 それは酷と言うものだろう、蒼。実際のところ僕らはもう、 人間ではないのだから」

 不思議なことに朱鳥という男の声は、分厚いアクリルを通して、 普通に聞こえてくる。

「人間を超える能力を備えた別の生き物になった以上、 人として生きて行けないのは当然だろう。君の方こそ、 もはや人でないのに、人の振りをして生きてどうするというんだ? 人のなかでは、たった一人の異邦人……、いや、 異邦グーラか。血が恋しくないか? 苦しいだろう、 蒼? 自分を偽って生きるのは、もうやめろ」
「だまれ! わたしは、おまえたちとは違う! 一緒にするな! おまえは、この手で倒す。それが、 わたしがふたりの思い出のためにしてやれる、最後のことだ」
「僕を倒す? 僕らの思い出の最後? さて、そいつはどうかな? 僕らはまた一緒になるんだよ、蒼」
「なんだと……」

 と言いかけて、ハッとなって視線を落とす蒼。
 床が、ぞわりと波打った。

「しまった! 虫女!」

 頭上の朱鳥に気を取られているうちに、 ゴキブリの大群がびっしりと床一面埋め尽くしていた。

「チェックメイト」

 朱鳥の宣言と同時に、虫たちが一斉に襲いかかった。
 どよめく黒い波があなたたちの両足を這い上がり、 あっという間に全身を包み込んだ。

「うッ!」

 ジーンズやTシャツの袖口から入り込んだ無数の虫たちが、 あなたの肌の上を這いずりまわった。
 その感触の異様さ、おぞましさにあなたは身をよじった。
 目と口をぎゅっと閉じて、 びっしりと顔を覆い尽くした虫を叩き落とそうと、
 あなたは両手をばたつかせた。
 鼻や耳の穴から、虫たちになかに入られたらお終いだ! 脳が喰われる!
 あなたは死に物狂いで、もがきまくった。 潰れた虫たちの粘液が、異臭を放ちながらしたたる。

「この世で最悪の敵は、何か知ってるかな?」

 楽しげな朱鳥の声が、 カサカサ動き回る虫の黒いヴェールの向こうから聞こえてきた。

「それは、退屈だ。僕は、この不死の体を手に入れて、 退屈から解放された」

 そばで蒼やトモキが、あなた同様に虫におおわれ、 あがいている気配がした。

「では、この世で最強の敵は何か? それは絶望と、 あきらめだよ。君たちは、これからそれを、 たっぷりと味わうことになる」

 朱鳥の声がどんどん遠く、小さくなって行き……、 あなたの意識は、ふっつりと闇に落ちた。
 ゴキブリの海に沈んだ。

「う……!」

 どれだけの時間が流れたか、あなたの意識が戻った。
 起き上がって辺りを見まわすと、トンネル状の通路、 サンロードの床の上だ。
 近くにトモキがぐったりと横たわっている。
 先ほどまで世界を埋め尽くしていた虫は、もういない。
 頭上を見上げる。朱鳥の姿はない。
 そして蒼の姿も、どこにもなかった。
 蒼の銃がぽつんと、床の上に転がっていた。



「おい! 起きろ、トモキ!」

 あなたはトモキの体を揺さぶった。うめき声を上げて、 トモキが意識を取り戻した。

「なんだ……? 助かったのか、俺たち?」

 自分の体をあちこち確かめるように見回しながら、トモキが聞いた。

「ああ、どうやら、そうらしい。だが、蒼がいない。 あいつらに連れていかれたんだ。ちくしょう、どうしよう!?」
「彼女は、ヤツらと同類の化け物だぞ。ほっとけよ。そんなことより、 さっさと逃げようぜ。冗談じゃないぞ、まったく」

 と、トモキは立ち上がった。
 あなたは、どこか腑に落ちない表情でつぶやいた。

「だけど、なんだってあの朱鳥というヤツは、 俺たちを見逃したんだろう? いくらでも、 ヤツらの好きにできたはずなのに……」
「知るかよ、そんなこと。それより、 どこか安全な場所を探そうぜ。そこに隠れてれば、 異変に気づいた周囲の街の警察なんかが動き出して、 事態を解決してくれるさ」
「だけど……」

 蒼を放って置けない、 と言いかけたあなたのポケットで携帯が振動した。
 あわてて確認すると、メールの着信だった。同じクラスのフカヤからだ。

「緊急連絡網だ。至急、学校に集まれ……?」

 あなたがメールの内容を読み上げると、トモキが首を傾げた。

「緊急連絡? 学校へ? なんだって、こんな時に? いや、 こんな時だからか? 他にもまだ、 俺たちみたいにヤツらから逃げのびてる連中がいるってことか」
「わからない……。くそッ、どうすりゃいいんだ?」

─See you Next phase─



次回行動選択

なし




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