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水底に誘う声 |
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数歩進んだところで、靴越しに冷たい水の感覚があった。 危ない、と思ったが、もう遅い。 限界を超える負荷の掛かった地面がゆっくりと崩れ、 水中に没していく。 周囲の腐葉土が辺りを巻き込みながら崩れ出し、 冷水と混じり合って一帯を泥沼へと変えてしまう。 (やれやれ……) ほんの少し足場の選択を誤っただけでこの有様だ。 腰まで冷水に浸かりながら、誰にともなく〇〇が悪態をついた時だった。 ――くすくす。 はっとして顔を上げる。あの声だった。 透き通るような冷たさの中にも艶のある、女の声。 今度は前よりもはっきり判った。聞き間違いなどでは断じてない。 聞こえてきた方角は――。 (……この、更に先か) そう遠くはないはずだ。 意を決して進行方向を定め、水底を足で確かめながら歩を進めて行く。 〇〇の起こした波が水面を伝い、白い霧の向こうに呑まれて行った。 *** やがて、前方に〇〇よりも一回りは大きな黒い影が見えてきた。 思わず緊張で息を呑んだが、その影が動く様子はない。更に数歩近付くと、 影の正体はただの岩だということが知れた。 (なんだ……) 僅かに緊張を解き、ひとつ息をつく。 次の瞬間、にわかに霧が逆巻くのを感じた。 白い霧に隙間が生まれ、視界が広がっていく。 岩の全貌が次第にあらわとなり、同時に――。 (――!!) 岩陰から、すらり、と白いものが滑りでた。 手だ。 じっとりと濡れた、生白い女の手。それが、 岩肌を撫でるようにゆっくりと蠢いた。 ――くすくす。 声と共に、手の主が岩陰からその姿を現した。 長い黒髪の女だ。 その生白い裸身には濡れた黒髪が纏わりつき、 病的な白さを更に際立たせている。 女は岩に寄り添うような姿勢で小首を傾げ、 口元に薄い冷笑を浮かべて〇〇を見つめ返してきた。 よもや普通の人間ではあるまい。 腰から下は水中にあって見えないが、 ここまでくれば大方の予想はつくというものだ。 立ち止まった〇〇に向けて、 彼女の細い指先がたおやかに“おいでおいで”をして見せる。 ……まだ、間合いは充分にある。 そう判断し、誘いに乗って更に一歩を踏み出した。 ――くす。 その途端、女の周囲が激しく波立った。 無数の黒い影が太い鞭のように水面下を走り、しなり、 交錯する。 荒々しく散る波しぶきの中で、 それらの影が大蛇の頭を垣間見せる。 なるほど。 どうやらこれが、彼女御自慢の脚線美らしい。 水底に誘う声(結構強そう) 〜戦闘終了〜 *** なんとか蛇女を倒し、ひと息つく。 張り詰めていた気が緩むと、途端に寒さから震えが来た。 いい加減、冷水に浸かりっぱなしで身体はすっかり冷えている。 湿原の主らしき者にも出会えたことだし、今回はこの辺りで引き上げるとしよう。 ─End of Scene─ |
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