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それぞれの動静

続き

     ***

「俺も行くことになった」

 幾つもの居住空間を備えたその“船”の後尾庭園で、 ユベールは双子の少女に向かって言った。
 黒服の少女は飛び上がって喜んだ。

「やったー!」

「それって、保護者がいないと不安だということですわね」



 白服の少女が、やや屈折した笑みを浮かべて言う。
「そんなところだ」

 ユベールは目の前の双子に言った。
 二人の少女の顔は殆ど見分けがつかない程に良く似ていたが、 髪形と衣装と、それから口調の違いで区別は簡単に付いた。
 黒服で、耳の下で髪を結んで縦ロールをつくり、言動が粗雑な方がジュリエッタ。
 白服で、髪は自然に伸ばしたまま、言動がやや丁寧な方がジュリアンヌ。
 恐らくお互い意図的に違いを作り、そこに自意識を求めているのだろう―― ユベールはそう推測していた。

「お前達がどこまで通用するかを確認するのと、 駄目そうな時に事態を収拾するのが俺の役目。まあ、尻拭いだな」

「いやらしい……」

 白服の少女は軽蔑の眼差しでユベールを見た。

「何の話だ。とにかく舐めてかかるなよ。お前らに今一番必要な言葉は、“油断大敵”だ」

「だいじょーぶだいじょーぶ! それじゃ、行くか!」
 そう言った黒服の少女は、自分の身長よりも巨大な金属斧をどこからか持って来て、肩に担いでいた。

「おいおい……。お前、それ持って行くつもりか?」

「ユベールだっていつも持ち歩いてるじゃん」

「俺のとお前らのとじゃ、携帯性が違いすぎるだろ。置いてけよ。 異常に目立つし、行く先々で床が抜けるから」

「えー」

「お前らなら持ち歩かなくても問題はないだろ。それに、 今回は多分素手でも充分だ」

「ユベール様がそうおっしゃるなら、私は置いていきますわ」

「やはり、ジュリアンヌは聞き分けが良いな」

 ユベールは白服の少女にそう言うと、今度はちらりと黒服の少女―― ジュリエッタの方に目をやった。

「私だって置いていくもーん」

 ジュリエッタは斧を放り投げた。
 飛んでいった巨大な斧は床の上に落下すると同時に凄まじい轟音を発し、床石を粉砕して自重で地下深くにめり込んだ。
 柄の一部だけが地上に残され、まるで旗でも立てたかのような状態となる。
 その周囲の床石はめくれ上がり、微細な粒子からなる砂煙がもうもうと舞い上がっていた。

「危ないな……。後片付けはお前がやるんだぞ、ジュリエッタ」

「そんなの後、後。出発出発ぅー」

「ああ、もう、楽しみですわ」

 双子の少女達は、忍び笑いを交えながらひそひそと何事かしゃべり出した。
 楽しそうな彼女達の後姿を見つめて、ユベールは思った。

 ――こりゃ駄目だな……。

 自分が随伴を名乗り出ておいて良かった。
 この少女達はまず、自分の強さと弱さを、 両方とも知っておく必要がある。教会の連中の中に、 それを教えてくれる相手が居るだろうか?
 こいつらの目を覚ませる程度に強く、それでいて、 命までは奪わない。そんなぬるい奴……。
 ユベールは頭を抱えた。

 ――絶対、居ないな。

「それではユベール様、参りましょう」

 双子の白い服の方――ジュリアンヌが振り返り、ユベールに手を差し伸べた。

「みっなごーろしーっ」

 ジュリエッタの陽気な歌を聞きながら、ユベールと双子達は“門”を越えた。

─See you Next phase─





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