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食堂


 食堂へと続く廊下を、気配を殺して歩く。
 そう、今は、自分の作業グループの食事の時間ではない。
 監視員に見つかって僕の番号を確認されてしまったら、 強制的に追い返されるどころか、厳しい体罰を受けるに違いない。
 確かこの通路をもう少し進めば、食堂に到達するはずだ。
 食堂にさえ入れば――



 その時、背後から大きな声で呼び止められた。

「待て!お前、どのグループの者だ!?」

 しまった、見つかったか!!

 僕は何とか人ごみに紛れて食堂に入り、 人工的な匂いのするスープをトレイに乗せると、すぐにテーブルに着席した。

 限られた昼休み――もっとも、 食べるだけの時間しか与えられないので休みなんて言えないが―― をより有効に使うためだ。

 さりげなく周囲に目をやりつつスープをすするフリをしていると、 情報屋と思しき男が僕の横の席に座った。

「ちょうど新しく入ってきた情報があるよ」

 情報屋は僕と目も合わせずに低い声で淡々としゃべり出す。

「その前に、何を渡せば情報がもらえる?」

 男の口調に合わせ、僕も小声でぼそぼそと話す。

「4649番さん、アンタには魔法の力があるね?」

 一体、どこで聞きつけたのだろうか。 僕の怪訝な顔など目もくれずに、情報屋は続ける。

「後々、アンタにその力を振るってもらう時が来るだろう。 俺はその時さえ来てくれれば、それでいい。 その為に情報屋をやっているのさ」

「つまり??」
「出世払いでいいってことだよ」

 情報屋は冷えた硬いパンを齧りつつ、口早に言った。
 どうやら食堂を巡回している監視員が、 こちらに近づいてきているようだった。

「『製作作業場』での労働は実は2種類あって、 それぞれ報酬の割合が違う」

 情報屋によると肉体労働は賃金が多めだがもらえる食糧は少ない。 手先を使う労働は賃金は少なめだが、 入手できる食料は多めだということだった。

「『中庭』には低ランクのモンスターがいる。 おそらく今のアンタになら勝つことができるだろう。 つまり、修行には打ってつけってことだ」

 確かに今の僕には、力が足りていないのかもしれない。
 もし何かを望むのなら、相応の力が必要―― それはどの世界だって同じなのだ。

「ちなみにそのモンスターだが、冷気に弱いらしいぞ」

 生物兵器の弱点まで調べているなんて。

「それと、これはオマケだ。『治療薬』の材料を教えてやろう。 『あやしげな蜂蜜』と『電解還元水』でできるハズだ。 どこかで役に立つだろうから、材料が集まったら試してみてくれ」

 薬の合成レシピまで知ってるとは凄いな――と、 感心していると、監視員の影がすぐそこまで近づいてきていた。

「今日はここまでだ。じゃあな、4649番さん」

 そう言うと情報屋は席を立ち、足早に去っていった。
 監視員が通過するのを待ち、僕も人ごみに紛れつつ、食堂を後にした。


─End of Scene─


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