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食料品街

『B1食料品街へ』選択

 地下に下りたあなたたちは、慎重に辺りの様子をうかがった。

 だん……、だん……。

 どこからか、何かぶつかるような重い音が聞こえてくる。

 あなたたちは顔を見合わせると、小さくうなずき合い、 音のする方へと歩き出した。
 様々な食料品がぎっしり並んだ棚の間を、警戒しながら、 ゆっくり進んで行く。
 壁際の一画を占めた精肉コーナーの方から、その音は聞こえていた。
 後姿が見えた。巨大な女、のようだった。薄汚れて、染みのついたエプロンを着ている。
 包丁というよりはナタと言った方がいいような大きな刃物を、軽々と振り上げ、叩きつけるようにして、まな板代わりにひっくり返した金属製の冷蔵ケースの上で、何かの肉を切っている。
 いや、断っている。つぶしている。

 だん……! だん……!

 トモキの足が床に転がっていた缶詰を蹴り、 すべった缶は別の缶だか壜だかにぶつかり硬い音を響かせた。
 女の手が、空中でぴたりと止まった。
 辺りは静まりかえった。
 ゆっくりと女の頭が振り向く。
 肩越しにあなたたちの姿を認めると、女はナタを持った手を下ろし、ゆっくりと向き直った。

「おやおや、また新鮮な食材が届いたってわけかい。 しかし、どいつもこいつも筋張っててマズそうだね。まあ、 いい。骨髄を取り分けて、出汁にでも使うとしよう」

 そう言うと、女はいきなり言葉にならない叫びをあげながら、
 ナタをふりかざして襲いかかってきた。

女ブッチャー(それなりに強そう)
[集中審議]ブッチャーは自己満足の可能性が高い




FLUSH省略

 戦闘に勝利した。

「エサの分際で、ちょこまかすばしっこい連中だね。 いい加減、観念おし!」

 そう叫んで、女はいきなりナタを投げつけた。
 あなためがけて、ブンブン回転しながらナタが飛んで来る。

「〇〇〇〇!」

 トモキが叫んだ。
 蒼が横っ飛びにあなたに体当たりし、 ふたりはそのまま床に倒れこんだ。
 脇を飛んで行ったナタは、 商品棚にぶつかって盛大に辺りに製品をぶちまけた。
 蒼の右腕が、女の大きな靴にどかっと踏みつけられた。

「くッ!!」

「ほぉら、つかまえた」

 無表情に蒼を見下ろした女は、 ぐっと体重を乗せて蒼の腕をふみにじった。
 蒼の顔が、はげしい苦痛に歪む。

 ぽき!

 乾いた音をたてて、蒼の腕が奇妙な角度にねじまがった。

「蒼!?」

 女はすかさず、蒼の細い首を片手でむんずとつかんだ。
 がっしり食い込んだ女の手は、 蒼の首をすっぽりと包んでまだ余りあるくらいに大きい。
 そのまま女は悠々と、蒼を空中に吊り上げた。
 蒼は、無事な左手で女の腕につかみかかり、必死にもがいた。
 女はびくともせず、余裕で立ち尽くす。

「死ね、小娘」

 女の腕がぎゅっとふくらみ、 太い指がさらに深く蒼の首に食い込んだ。

 ぼきっ。

 鈍い音がして、蒼の首ががっくり折れ曲がった。

「蒼ッ!!」

 女は、そのまま蒼の体を、振り向きざま壁に叩きつけた。

 ドカッ!!

 蒼の体は狂ったように跳ね飛び、フロアにひっくり返った。
 あなたとトモキは愕然となって、ぴくりとも動かない蒼を見つめた。
 首や手足はあり得ない角度にねじまがり、まるで壊れた人形のようだ。
 サングラスは、はじけ飛んで床に転がっている。

「蒼!? 蒼ッ!!」

 あなたは声を限りに呼びかけるが、 彼女は返事をしない。ぴくりとも動かない。
 当たり前だ、あんな姿になって生きていられる生き物はいない。 いるわけがない。

「フ……、バカどもめ。本気で、あたしたちに立ち向かえるとでも?」

 女はあなたをじっと見すえて、にまあ、と笑みを浮かべると、 あなたの方にゆっくりと近づいて来た。
 あなたの目の前に立つと、小さく丸い目でじっと見下ろして、

「心配するな。すぐにお前にも、あの娘の後を追わせてやるよ」

 そう言うと女は腰のベルトから、 使い込んだ包丁を抜き出し、ゆっくり振り上げた。

「さあ、どこから叩っ切ってやろうかね。腕か? 足か? 首か? ええ?」

 あなたは恐怖と絶望、怒りと悲しみとで張り裂けそうになり、 思わず絶叫し……
 コツリと、女の首筋に銃口が押し当てられた。

「チェックメイト」

 女は愕然とした顔を背後にねじむけた。
 そこには、闇のように真っ黒な両目をのぞかせて、 蒼が立っていた。

「バ、バカな……!? お前は、もう………」

「正解! わたしは、もう死んでいる」

 左手でトリガーが引き絞られて、

 パン!

 と女の頭部が、はじけ飛んだ。 骨片と肉、脳髄を盛大に撒き散らして。
 頭をなくした体が、ぐらぐら揺れて、ばったりと崩れ落ちる。
 あなたは、呆然となって蒼の姿をみつめた。



「そ、蒼……、まさか……?」

 かすかにうなずく蒼。

「わたしは、グーラ……、女グール……」

 その時になってはじめてあなたは、 彼女の唇が青いのはルージュじゃない。
 血が通っていないからだ、と気づく。
 蒼が、がっくりと膝をついた。へし折れた右腕が、 体中の傷が、みるみる修復されてゆく。

「体内のバクテリアが、最大限に活性化してる……。 だから、今わたしの、人の意識は……、くッ!」

 蒼は体を丸め、激しく震えだした。

「蒼?」

 あなたは蒼の背に、そっと手を伸ばそうとした。
 ガッと、蒼の左手があなたの手首をつかんだ。

「食べたい……、あなたを……」

 顔を上げた蒼の表情が変わる。口が唸るように歪んで、 にゅうっと牙が延びた。
 愕然となってあなたは、蒼の暗い目を見つめた。
 小刻みに震える、あなたをつかんだ蒼の手。
 あなたの腕はゆっくりと蒼の口元に引き寄せられていった。
 蒼の口が大きく開かれ……、開かれて……

「蒼ッ!?」

 あなたの手を投げ出すと、顔を背けて、 蒼は勢いよく立ち上がった。
 そのまま蒼は、あなたに背を向け、逃げるように駆けだした。

「蒼……!? 蒼ッ!!」

 あなたの叫びは、彼女に届くことなく、空しく宙に消えて行く。

「俺の言ったとおりだったな。正体をあらわしやがった」

 呆然と立ち尽くしたあなたの横で、トモキが言った。

「化け物の一員だったんだ、あいつも」

 あなたはただ、蒼の走り去った先をじっと見つめていた。

─See you Next phase─



次回行動選択

なし




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