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聖公庁礼拝堂

漆黒のベレー(結構強そう)が現れた!



☆○○○はハルバードを手に入れた!

 戦闘に勝利した。

 戦斧が敵の手から、がらん、と音をたてて落ちた。

「うおぉおッ!」

 モルトはわれ知らず雄たけびを発し、 渾身の当身で強敵の巨漢兵を昏倒させた。
 同時に、やむことなくつづいていたオルガンの演奏が止まった。

 戦斧の一撃を受けて腹部に負った深手は、 またしても驚異的な速度で再生しつつあった。
 それは再生というより、異物が増殖していくような感触だった。
 すべてが新しい組織に置換されたとき、 オレは人間ではなくなっているのではないか?
 肺腑の底から湧きあがる迷信的な恐怖に身震いしつつ、 ブラックベレーのエースをみおろして、汗をぬぐった。

 ――どうにか、殺さずに済んだか。

 モルトの心に、戦いで死んだ者たちの顔が去来する。
 薬物催眠で戦いを強制された義勇兵の少女。 上層部の“筋書き”を遂行するため、 無意味な任務で生命を落とした戦友たち……

 ――あんな思いは、もう御免だからな。

 モルトはくちびるを噛んだ。

      ***

「素晴らしいわ! 完全体ストラルドブラグ――ついに完成したのね!」

 離れて見守っていたカルミネラが昏倒した兵士に歩みよった。

「筋力、胆力、驚異的な意志力。どこを取っても申し分ない被験体ね。 あなたに勝てる“生身”の人間は、もういないわ――」

 カルミネラは、ふわりと立ちあがった。
「でも、言ったはずよ――手加減すれば、この者の生命はないと」

 横たわる巨躯の兵士に、紫の粉末をぱらぱらとふりかける。

「――!? 何をする気だ!」

 兵士の全身が突然発火し、どす黒い焔がぼっとあがった。 モルトは反射的に肘をかざし顔を覆う。

 手をどけると、兵士の身体は消えていた。 ぶすぶすとくすぶる炭クズだけが、床にのこっていた。

「貴様!」

 そのとき鋭さを増したモルトの聴覚が、第三の気配をとらえた。

「――!」

 その人影はゆっくりと拍手しながら、歩みよってきた。
 コツコツという足音が、礼拝堂の吹き抜けの天井にこだまする。

「完全体ストラルドブラグの誕生――この日を待ちのぞんだぞ。 今宵は記念すべき夜となろう」



 階段の上、中2階の聖像の裏から姿を現したのは……
 聖公シエロその人だった。


─End of Scene─







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