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聖公庁地下 |
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「――不敬者!」 モルトは聖公神衛隊の手でまたたく間に捕縛され、地下室に放りこまれた。 ……数日後。モルトが監禁された部屋の扉を叩く者があった。 「昇進おめでとう、大尉。いえ、モルト・グラッスス少佐」 「また貴様か。“魔女”カルミネラ」 香が鼻をついた。 鋼鉄製の枷で手足を拘束されたモルトが顔もあげずにこたえる。 「自由が欲しくない?」 「いらぬ」 「そう――」 カルミネラの瞳がいたずらっぽく輝いた。 「反攻作戦がはじまり、戦局はこちらに大きく傾いているわ。 民衆はあなたを、“戦争の英雄”ともてはやしている ――こんな場所に囚われているとは、つゆ知らず」 そう、くすくすと笑う。 「――だから?」 「実験に協力してもらえれば、 あなたの罪をなかったことにしてあげられると言っているの」 真紅のドレスの衣ずれがして、強い香が鼻を刺した。 「罪人に赦しを乞わねばならぬ罪など、ない」 「強情ね。でも、あなたに拒否権はないわ」 カルミネラは手にした箱から、注射針をとりだした。 そのときだった。 身体が痺れ、自由がきかなくなっていることに気づいたのは。 「これは――痺れの香!?」 「そう、黒蓮から抽出した麻酔香よ。大丈夫、目が醒めれば、 いまよりも元気になっているわ」 モルトの身体の痺れは増し、抵抗はおろか、 もはや声をあげることさえできない。 カルミネラの細い指がモルトのあごをもちあげ、生ぬるい液体が、 注射針を通じて頸静脈中にゆっくりと注入された。 鎖骨に熱を感じる。 彼は目の前の光景を、夢のなかのできごとのように知覚した。 まぶたが自然と落ち、視界がぼやけてゆく。 緩慢に意識が薄れゆくなか、モルトの聴覚は官能的なささやきをとらえた。 「おやすみなさい。わたしのかわいい、ストラルドブラグ……」 ─End of Scene─ |
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