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命をかけた戦い


「フレイシア将軍だ!」

 僕と母さんは、魔女攻略のためのライダーの前線基地に辿り着いた。
 残ったライダーのうち、選び抜かれた精鋭が、ここに集結している。
 テントに入った僕たちを、2メートル近くある屈強な男が出迎えた。



「よ〜う、フレイシア。ひさしぶりだなあ。長旅で疲れただろう」
「ドゥーレイ。今はドゥーレイ大佐か。あの頃を思いだすな」

 ドゥーレイ大佐。
 10年以上も前に、父さんと母さんと共に戦ったライダーだ。

 最前線のライダーたちは、多くの情報を掴んでいた。
 エフラバ山と呼ばれる山の頂上に、「魔女の巣」と呼ばれる拠点があり、今、 女王メルファティアはそこにいるそうだ。

「この時期は、魔女の巣の周辺は霧に包まれている。フレイシア。 女王を急襲するなら霧が出ている間がチャンスだが、いつ頃にする?」
「明日の朝だ」
「……って、はええなオイ」

 ドゥーレイは、母さんの決断に苦笑いを浮かべた。

「私は、兵士たちにあいさつしてくる」

 母さんがテントを出ていき、僕とドゥーレイが残された。

「よ〜う、お前がフリーゼイか。会いたかったぜ〜。帝王が、 お前のことをよく話してた」
「父さんが、僕のことを? なんて……?」
「もうすぐ生まれる子供の顔を早く見たい、ってな。いつも、 そればかり言ってた」

 自分の知らない人が、自分の知らない父さんのことを話している。
 父さんがこの場にいたという足跡を見つけたような気分で、 僕は少し嬉しかった。

 決戦の朝。

 母さんとドゥーレイ大佐、それに20人ほどの精鋭部隊が指揮テント前に揃った。
 精鋭部隊は、いずれも父さんと共に戦ったことのある名うてのライダーばかりだ。

 ドゥーレイが、ライダーたちと談笑している。



「ね…ねえ……、おじさん」
「おお、フリーゼイか。初めての戦いで、ビビっちまったか?」
「そうじゃないけど……。これから決戦に行くのに、みんな、 こんなに緊張感がなくて大丈夫なの?」

 僕がそう言うと、ドゥーレイは一度キョトンとした後、大声で笑い始めた。
 周りのライダーたちも、一緒に笑っている。

「こいつは参った! ヴァレイにも、昔よく言われたぜ! お前たち、 ダラけすぎだってな!」
「父さんが、僕と同じことを?」
「ああ、そうだ」

 ドゥーレイは僕の肩をポンと叩くと、自分の竜へ飛び乗った。



「ほら、お前ら! 帝王の血を引く若きライダーのご命令だ! ちゃんと従わねえか!」

 ドゥーレイがそう言うと、精鋭ライダーたちは笑顔で竜に乗り始めた。

「あれでも、百戦錬磨の男だ。やつのことは心配いらない。 お前は自分の身を案じろ」
「あ、母さん」

 母さんは、それだけ言うと、長年戦場を共にした、 メシアという名の紅竜に乗った。
 動作に、なんの躊躇も迷いもない。
 これから女王との決戦に行くというのに、みんな驚くほど余裕がある。

 僕たちは、女王のいるエフラバ山に向かって飛び立った。

─End of Scene─

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(12時間更新)
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