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旅立の日






「僕も、魔法大戦に行きたい。母さんの援護をやらせてほしい」

 母さんが足を止め、振り返った。

「……冗談も休み休み言え」
「冗談なんかじゃないよ。きっと、足手まといにはならない」
「逃げ場のない死の恐怖を経験したこともない未熟者に、 戦場の何がわかる。己の力量をわきまえて物を言え」

 母さんが、再び背を向けて歩きだした。
 僕は食い下がった。

「僕が未熟者かどうか、見て判断してほしい。 今から、サルバに乗ってみせる」
「……時間の無駄だ」
「見るだけでいい。お願いだ」

 母さんは、ようやく僕の方に身体を向け、 まっすぐに僕の顔を見つめた。

「僕は……、本気だ」
「……いいだろう。どのみち、 あの竜はお前に与えようと思っていた。北の檻で待っていろ」
「あ…ありがとう! 母さん!」

 僕は北の檻へ向かった。
 檻の中で、サルバが身体を縮めて眠っている。

「サルバ、僕だ。目を覚ませ」


 いつもの調子で、僕はサルバに話しかけた。
 ゆっくりとサルバが瞼を開く。

「サルバ。またお前と会えて嬉しいよ」

 緩慢な動作で檻から出てくると、 サルバは服従を示すように僕の前でしゃがみこんだ。

「あの凶暴な竜が、一瞬でお前を主人と認めただと?」

 母さんが、こっちに向かって歩いてきた。

「満足に竜に乗ったこともないお前に、 どうしてそんな真似ができる?」
「……………」
「……まあいい。さあ、お前の竜さばきを見せてもらおう」
「ああ」

 僕は、サルバの背にまたがった。

「待て……、フリーゼイ」
「えっ?」
「あれは……」

 母さんの視線につられて空を見上げると、 3つの光が空を飛んでいた。
 魔女だった。

「……あれは、中級位の魔女? リグド・ドラゼリアの空にまで、 魔女が飛んでくるなんて……」
「どうやら、アカデミーに向かうつもりらしいな。フリーゼイ、 サルバに乗るのは中止だ。私がやつらを追い払う」

 僕は…………。

強行偵察部隊(それなりに強そう)が現れた!



─See you Next phase─


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