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旅立ちの日

話しかける選択

 話しかけてみよう。
 時を遡る前の時と、なるべく同じ行動をしようと思っていたが、 これくらいは違う行動を取ってもいいだろう。

 僕は母さんを探した。

 バルコニーの扉の隙間から、夜気が部屋の中に舞い込んでくる。
 扉を開くと、バルコニーで竜の鞍を磨く母さんの姿があった。



「か……、母さん」

 母さんは振り向かなかった。
 声が聞こえていないはずがない。
 だが、母さんは僕の方にはまったく視線を向けてくれなかった。

「あ…明日は戦場だね……。5年ぶりだっけ? 調子とか……いいのかな?」

 母さんは返事をしない。
 黙ったまま。

「あ……あの。気をつけ……」

 僕の言葉をさえぎるように母さんは立ち上がり、僕に背を向けた。

 母さんが行ってしまう。

 そう思ったら、とてつもない悲しみが込み上げてきた。

 そうだ。
 僕は、忘れてしまっていた。
 前の時の僕は、こうなることがわかっていた。
 だから、母さんに声をかけなかったのだ。



「……如才なさや、愛想を振りまくことで、 存在感を示そうとするのはよせ」

 母さんの声は突然で、僕は一瞬意味を捉え損ねた。

「男ならば、存在感は武威のみで示せ」

 母さんは、それだけ言って立ち去ってしまった。
 母さんは軍人だ。
 子供のことより、家族のことより、今は軍のこと、 国のことで頭がいっぱいに違いない。
 だから僕は、母さんに話しかけるべきじゃなかった。
 悲しい思いをするだけだと、前の時の僕なら、わかっていたことなのに。

 僕は自室に戻り、寝床へもぐり込んだ。
 前の時と同じ自暴自棄な感情が、頭の中を立ち込めていた。
 戦争も、軍も、アカデミーも、いっそライダーなんて存在さえ、 この世界から消えてなくなってしまえばいい。
 眠りに落ちる瞬間まで、僕はそんなことを考え続けていた。



 朝、目が覚めた僕は、窓から庭を眺めた。
 紅い竜に乗る母さんを、ミシアレシアが見送っている。

「母さん……」

 消え入りそうな声で、僕は呟いた。
 母さんを乗せた紅竜メシアが飛び立つと、 母さんは一度も振り返ることなく彼方へと去っていった。
 ミシアレシアは、母さんが飛んでいった方向をずっと見つめ続けていた。

 僕が1階に下りると、ミルトが厨房から出てきた。

「お母さまは、さきほど戦場に向かわれました。 長い戦いになると、それだけおっしゃっておりました」

 ミルトの声に、いつになく毅然とした厳しさが感じられた。
 ミルトの気持ちはわかる。
 戦場に行ったライダーは、帰ってくる者の方が少ない。
 今はそういう時代なのだ。

「お母さまから、ぼっちゃまへの伝言です。 屋敷の北の檻にいる銀竜を、自分の竜にするように……と。 あの竜のケガは、すっかりよくなっているそうです」

 僕は受け答えをするでもなく、すぐに屋敷を出て、北の檻へと向かった。
 母さんからのこの伝言は、当然わかっていた。
 僕がコンビを組むのは、この竜を置いて他にいない。

 檻の中では、巨大な竜が身を持て余すように身体を縮めて眠っていた。
 僕の気配を感じとったのか、竜は目を覚ます。

「サルバ。また、よろしくな」

 サルバが短く吠える。
 サルバは、再び僕の相棒となった。

─End of Scene─

次回行動選択
・まだ決めていない
・風まかせ
・続ける
・エルアークへ戻りたい






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