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旅立ちの日



 大陸の北方にある竜使いの国、リグド・ドラゼリア地方───。

 古代より、竜を自由に操る『ライダー』と呼ばれる人々によって、生活と治安が保たれてきた。
 だが今は、南方を支配する魔女の国『ウィズラー地方』と、15年に亘る魔法大戦の只中にあった。
 この数年、リグド・ドラゼリア地方は、兵数に勝るウィズラー地方の猛攻に対し、防戦一方という戦況だった。

 悪鬼グライバルドの孤軍奮闘により、なんとか踏みとどまっていたが、 彼の死により戦局はいよいよ最悪の局面を迎えつつあった。
 悪鬼グライバルドは、今は亡き『帝王』と呼ばれたライダー、ヴァレイの一番弟子だ。
 その悪鬼グライバルドの戦死により、新たな将軍として白羽の矢が立ったのは、帝王ヴァレイの戦友にして妻でもあったフレイシア軍司令官。
 ライダーとしてはすでに第一線を退いていたフレイシアだったが、国家から最後の希望を託され、戦場への復帰を決意する。

 12年前に死んだ帝王ヴァレイ、そして、新将軍フレイシア。
 この二人が、僕の両親だ。

「ぼっちゃまぁ。どうぞ一言。このミルトに免じて、どうぞ一言、 お母さまに激励の言葉をおかけくださいませ」

 いつも笑ってばかりの乳母のミルトが、 このときばかりは懇願するような顔で僕に迫ってきた。

「やめとくよ。僕に声をかけられても、母さんも困るだろうし」

「そんなことございませんのに……。本当にこの親子は、 素直じゃないところばっかりよく似てるんだから……」

 ミルトのこの言葉で、母さんも僕に声をかけるのを拒否したんだろうとわかった。

 無理もない。

 母さんは今、僕のことを気に掛ける余裕なんてないんだろう。

「こんなこと言いたかありませんが、 お母さまは明日戦場に行かれるのでございますよ? あの時に声をかけておけばよかったなんて後悔しても、 ワタシは知りませんからね」

 ブツブツと言い残すように、ミルトは厨房の方に下がっていった。

 ライダーの養成学校である『アカデミー』への入学の日が、母さんが戦場に復帰する日と重なってしまった。
 一緒にアカデミーに入学するミシアレシアは、明日に備えて今日は早くに眠りに就いたようだ。

 時を遡る前の時にも、これと同じ夜があった。
 だから、よく覚えている。
 前の時の僕は、結局、戦争に行く母さんに何も話しかけなかった。

 今回は……。

─See you Next phase─

次回行動選択
・まだ決めていない
・風まかせ
・話しかける
・話しかけない






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