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少女の企み[続き] |
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「まず、こう……道が続いていった先に、ルブターのでかい家がある」 蛇のようにうねった道の先に、大きな長方形が描かれた。 「これが本部。んで隣に厩舎がある。そのまた隣に納屋がある。納屋と言っても普通の家より広い。んでここらへんに噴水があって……で、反対側のこっちに二階建ての離れがある」 あれやこれやで長方形の周りに色々図形が加わった。 マノットと○○は前かがみで図を眺めながら説明を聞いていた。 「まずこの付近までは普通に入れるのか?」 「うん。周辺はそこらの原っぱと大差なし。私でも楽勝なぐらいだから、○○なら目を瞑ってても辿りつけるよ。人に会わない限りは」 ハリエットが顔を上げる。 人こそ最大の問題であるように思えるが、まあ凶暴な動物なども少ない方が良いに決まっている。 「で、私の華麗なる隠密調査の結果、本邸への侵入はかなり難しい。使用人とかメイドさんとかが1日中動き回ってました」 「メイド……だと」 マノットの眼差しが真剣な色を帯びた。 「でも、離れの方は誰も住んでない。ルブター本人でさえ滅多に使ってなくて、使用人達からは“趣味の部屋”と呼ばれてる」 「個人の物置みたいなもんかな」 「そんな感じするでしょ? あの変な生物入りの壺とかを買い集めてるなら、本邸よりは離れに色々置いてそう」 「納屋の方が怪しくねーか?」 「それが、なぜか離れの方に番犬? を置いてるらしいのよねー。どうも“ミケランジェロ”と言う名前の獰猛な犬? がいる」 ハリエットは「番犬」や「犬」のあたりに妙な半疑問イントネーションをつけて言った。 「なんだその微妙な言い方は。犬じゃないのか?」 マノットも気に掛かったらしく、腑に落ちないような顔をしている。 「や、実は直接見たわけじゃないから、犬かどうかは良くわかんない」 「そうか。まあ常識的に考えれば、番犬は犬に決まってるわな」 「だよね。番犬を置いた趣味の部屋ってもう超怪しいでしょ。そこでこの犬なんだけど――」 「わかった。その犬をぶち殺せっていうのが依頼内容なわけだな」 「違うって。マノットは考えることが物騒ねー」 「お前に言われたかねーよ」 「私としては、罪もない犬をぶっ殺して侵入するのは忍びないわけよ。そこで“エビフライ”の登場です」 ハリエットがにやりと笑った。 ここでエビフライに繋がるということは、もしや――。 「まさかとは思うが……」 「そのまさかよ。私の綿密なる事前調査の結果、ミケランジェロは“エビフライ”に目が無い! ……ということが判明しました」 ハリエットは自信満々の笑みで、驚くべき調査結果を発表した。 「んな馬鹿な。犬に油もの食わせちゃ駄目なんだぞお前」 「よく知らないけど、貴族の犬なんてそんな感じじゃないの? よそ様の食生活に口出ししないのよ」 「エビフライで犬を釣って離れに潜入? 目的のモノが離れにあるかどうかも確認してないのに、大丈夫かこの計画」 「私の中では一分の隙も無い計画に仕上がってる。ところで、ここまで聞いたからにはあんたも参加すんのよ」 ハリエットはマノットに言った。 「ん? ああ、まあ……最初からそのつもりだが」 「なら話は早い。エビフライを調達できたら、再びここに集合よ! その日の内に作戦を決行する!」 ハリエットは○○に向かってびしっと指を突きつけた。 「一応確認するんだが、そのエビフライはひょっとして俺らが持参するのか?」 「当然でしょ。この辺じゃ売ってないし。私つくれないし。揚げ物とか怖いじゃん。あんたできる?」 「一流の男は料理もこなすものだ」 マノットは不敵に笑った。 「だが、残念ながらエビ肉自体を滅多に見かけない」 「なんか嘘っぽいけど、確かにエビは見かけない」 「俺の料理の腕を披露したいところだったが、残念だな」 「犬の食べるもんだし、多少不恰好でも形になってれば良いと思うんだけどね」 二人はそんなことを言いながら、ちらりちらりと○○の方に目を配る。 明言はされていないが、この“エビフライ”を調達する役目は自分がやるしかないのだろうな、と理解した。 「じゃ、そういうことで……。後は○○に頼んだ!」 ハリエットはにこやかに手を振って、サナトリウムに向かって歩き出した。 マノットも「メイドって良いよなぁ……」などと呟きながら、あらぬ方向を見つめて去っていく。 今やエビフライの調達は○○一人に課せられた使命であることは明白だった。 本当にこれで良いのか、という気がしないでもないが、ともかくここはエビフライで何とかなることを祈るとしよう――。 ―End of Scene― |
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