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固有秘蹟
楽そうなエンダー 勝利

     ***

「無理でしたー。てか勝てるわけねー」

 びたーんと大の字となって地面に倒れたエンダーが情けない声を上げる。 何とか勝利することができたようだ。

「ですが私の見た所、繋いでおいた本との新たな縁の道は、 ちゃんと安定したようですね。エンダーさん、どうですか?」

「あー?」

 伸びていたエンダーは老師の言葉に頭だけを僅かに上げて、

「……ああ、確かに。なんか意識したらそれで出し入れできる感じがするな。 この力」

 掲げた少年の右手に、青く淡い輝きが灯ったり消えたり。 傍から見ていて結構気味が悪い。

「自分じゃなくて他人に幸運ってのがどうなのよって感じだけど……ま、 暗いところで照明の代わりにゃなりそーだな、これ。──よっと」

 そうこうしている間に体力が回復したのか、 軽い声を上げて跳ねるように飛び、立ち上がるエンダー。
 そこへ、

「では、エンダーさんには次を」

「……は?」

 ぽかん、と顎を落としたエンダーの視線の先には、 老師の隣からこちらに向かって歩いてくるアリィの姿があった。
 いつの間にか手にしていた細長い木の枝からは、 桃色の花びらが大量に吐き出されて、 彼女の身体を彩るように渦を巻いて舞っている。 蒼く輝く長髪は帯電するような光を生んで、 周囲の空間がちりちりと耳触りな音を立てていた。

(うわぁ……)

 明らかに尋常ではない。その一言に尽きた。

「いや、ちょっと待て。 確かにそんな話だった気がするがちょっと待って欲しい。 ……ホントに俺がアレと戦うの?」

 思わず指差し、老師に問うエンダー。対し、 小柄な老人は好々爺然とした笑みを浮かべて、

「ええ。 これ以上無関係である〇〇さんの手を煩わせるのも気が引けますからな。 相棒のお相手はちゃんとしてあげなくては」

「別に偶然の道連れってだけで相棒って訳でもねーんだけど!!」

「はははまたまた。では、アリィさん。エンダーさんを広場の中央の方へ」

「あい」

 老師の指示に従い、光放つ髪をなびかせたアリィは、 気配に圧されて完全に萎縮している少年の首根っこを捕まえてずるずる引き摺っていく。
 〇〇は彼の生還を祈って軽く印を切り、そして楽しく観戦するべく“堂”の前の階段に腰を下ろした。

「ちょ、ま、おま、なんか光って、何でそんなところから、嘘──あっー」

 どーん。

 開始数秒。音と共に派手な閃光。続いて、 エンダーが天高く宙を舞う姿が見えた。

(……あれは無いな)

 今後何があっても、アリィと本気で戦うような状況は避ける事としよう。
 〇〇はそう誓って、 そしてべちゃりと地面に落下したエンダーを投げやりに応援することにした。

─End of Scene─





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