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竜頭の樹上

 中心となる“箱舟”の前方に浮かぶ小島。 竜の頭の如く前へと伸びたその島の先端部からは、 地面となる部分から太い樹木が絡まって更に前へ伸びて、 まるで角のように突き出ている。
 その角の更に先端。根元では大の大人が数人手を繋いでも抱え切れない程の太さの樹が、 足場にするのも危うい程に細くなった先端部へと、○○は足を運ぶ。

 不確かな足元。見下ろせば、薄く広がる雲の向こうから、 遥か遥か下方に広がる翠の海が見えた。
 流れる雲の速度から、下ではかなり強い風が吹いているのが判るが、 上方に在る箱舟ではその風を感じる事は無い。 箱舟はその全体が特殊な力で護られているらしく、 この高度にあっても快適な空間が保たれている。
 護りの力は箱舟の外縁部に近づく程弱まるらしいのだが、 この箱舟の前部にある小島だけは、その法則から免れていた。
 その理由が、この島の前方先端部、“竜頭の樹上” を己の居場所とする老人、箱舟の住人達の間で“老師” と呼ばれる人物の力にあるという。

     ***

 島の前方より延びた枝の先の先に座し、ただただ遠く、 船の行く先を眺めている。それが、この場所を住処としている箱舟の住人 “老師”の常だ。
 しかし、今日は違った。
 珍しい事に、 老師はいつもの島から伸びた大樹の先端ではなく島の縁の部分に座っており、 そして老師と向かい合う形で地面に腰を下ろす二人の人物に、 何かをあれこれと話しているようだった。

 老師の対面に座っている二人。一人は、 組んだ胡坐に片肘をついた赤衣金髪の少年。 もう一人は、背筋を真っ直ぐに伸ばし、 微塵の歪みも無い正座を維持する白衣黒髪の少女だ。
 彼らのことは知っている。少年の方がエンダー・エーベル。少女の方がアリィ。
 自分と同じ、本という世界の枠外にある者──“迷い人”だった。

「おや、○○さんですか」

 老師がこちらに気づき、視線と声を寄越してくる。 それに釣られて“迷い人”の二人もこちらへと顔を向ける。

「いよう、○○。どしたのこんな辺鄙なとこまで」

「…………」

 エンダーが軽く手を上げつつそう訊ね、 アリィの方は呆とした視線をこちらに向けるだけで無言。
 ○○は彼ら三人の近くへと移動しながら、 少し老師に会いに来ただけだと話す。

「爺さんに? ──ああ、あれか? もしかして○○も、 姫様に『老師から固有秘蹟について教わってきてください』とか言われてんの?」

 自分の場合は姫様──ツヴァイではなく、 老師の方から誘われてという形ではあるけれど。 そう反射的に答えて、そこで○○は首を捻る。

(……固有秘蹟?)

 ○○が老師から聞いていた事柄は、確か原理述秘蹟とか、 そういった名前のものであった筈だ。固有秘蹟。同じ“秘蹟” という単語がついているのだから、然して違いはないのだろうが ……ツヴァイと老師で、 同じ事柄を称するのに多少別の言葉を使っているという事だろうか。
 ○○はそう予想して、老人に思いついた事をそのまま話してみた。 が、老人は○○の想像に反して、いやいやと首を横へと振る。

「原理述秘蹟と固有秘蹟は、確かに系統としては同じ流れに属しますが、 示す事柄は別のものです。固有秘蹟は○○さんには全く関係のないものですから、 ツヴァイはその説明を省いたのでしょうな」

 関係ない、とはどういう事だろう。
 そもそも、ではその固有秘蹟とやらは一体何なのか。
 ○○の当然の疑問に、老師は「そうですなぁ」と○○とエンダー、 そしてアリィの方へと順々に視線を送り、

「○○さんにまた一から説明するよりも、 実際に見てもらったほうが早いでしょう。 今からこちらのお二人に、 単書の中で固有秘蹟についての本格的な指導を行うのですが──どうです?  貴方も見物して行かれては」

―See you Next phase―




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