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辺境の街 |
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「エルニノさま!」 あわてて駆けよろうとすると、 黒い甲冑を着込んだ剣士にぶつかって、ゆく手をはばまれた。 「あやしいヤツ!」 石畳にひざをつき、怖そうな剣士たちに囲まれる。 ちょ、ちょっと待って。 「《アクタ・ルクレチア》のカメラマンです! あの、エルニノさまの取材を――」 「エルニノさまは庶民の生活を視察旅行中だ。取材には応じられぬ」 黒い面頬の下で虚ろな声がこたえ、思わず身震いがした。 というか、この騎士みたいな人たち、誰? ぽかんとみあげていると―― 「大丈夫? ケガしなかった?」 なんとエルニノさまが進みでて、わたしの手をとってくれた。 「エルニノさま!? は、はい」 立ちあがると、エルニノさまがふりかえって黒騎士に言った。 「写真、撮ってもらおうよ」 「聖公神衛隊はエルニノさまの護衛を厳命されております。まかりなりませぬ」 聖公神衛隊! 信仰に生涯をささげ、聖公に絶対の忠誠を誓う、 神の軍隊だ。 ……にしてはずいぶん不吉なデザインだけど、 甲冑にはたしかに聖公庁の聖印が刻まれていた。 「大きいカメラだね! 特別仕様なの!?」 エルニノさまが興味津々な様子でわたしのカメラをのぞきこむ。 それにしても。 ――かわいい! 動物の子どもみたいなふわふわの髪、 思わず頬ずりしたくなるようなすべすべの肌。 ……怖い神衛隊にみはられていなければ、 本当にすりすりしていたかもしれない。 「ねえ、みんなで写ろうよ!」 エルニノさまは周囲の人たちに声をかけ、にっこりと微笑んだ。 「いいでしょ?」 聖公神衛隊のツワモノも、エルニノさまの満面の笑顔には勝てなかったらしい。 フレームには不気味な黒騎士だけでなく通行人までがわいわいとおさまった。 全員Vサインで。 「はい、チーズ!」 ─End of Scene─ |
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