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エルアーク:主の書室達 |
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主の書室達へと足を運ぶと、ツヴァイはいつものように部屋中央に置かれた椅子に座っていた。 「あら、○○さん。すぐにお茶を用意しますから、そちらの席へどうぞ」 そういうとツヴァイはすぐさま席を立ち、お茶の用意をしに行く。 ○○がいつもの席に腰を下ろすと、机の上に残されていた一冊の本に目が行く。ツヴァイが今まで読んでいたものだろうか。 ――それにしては。 この本、何故こちら向きに置かれているのか。 「あ、その単書に興味がおありですか? そうですか、そうですよね。では、円環の方へ参りましょうか」 気付くとすぐ隣にツヴァイが立っていた。 そして、その単書を取り上げると、そそくさと部屋から出て行く。 問答無用。 おとなしくついて行くしかないようだ。 *** 「――あ、“仮記名”の前に、ひとつお伝えしておくことがあります」 ツヴァイが立ちどまってくるりとふりむいた。 「この“ルクレチア物語 ―嘆きの聖都―”という書は、すこし特殊な章立ての書物で――“現在”の物語と“過去”の物語が、章ごとに交互に進行するようになっています」 金髪の少女は、まるで薬の効能書きを読みあげるかのように、すらすらと説明をつづける。 「主人公は、ふたり。“現在”の物語の主人公は女性で、名前はセルリア。“過去”の物語の主人公は男性で、名前はモルト。――ですからあなたは、ふたりの主人公の物語を体験することになりますね」 ――つまり、ひとりでふた役? 混乱しないだろうか? 「……ええ、自我の混乱・失調、最悪の場合は崩壊などの危険が」 猫に追いつめられたネズミのように、思わず数歩後ずさる。 「――いえいえ、御心配は無用。そうした危険がないことは、入念に検証済みです。大丈夫、すぐに慣れます」 黒衣の少女は隠す様子もなくくすくすと笑い、“ルクレチア物語”の最初の頁をひらいた――また、からかわれたようだ。 とはいえ一抹の不安を払拭しきれぬ○○に対し、少女は「問答は無用」と言わんばかりに、呵責ない微笑をむける。 「さあ。挿入栞をこちらに――」 ─End of Scene─ |
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