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エルアーク:北門の護り手

「きぅ」

 そんな幼い鳴き声が霧に包まれた平地に響くと同時、 ○○の視界が一瞬闇に閉ざされる。

「……ッ!?」

 老師が従える四匹の獣の内の一匹、 玄武に向けて攻撃を放とうとしていた○○は、 舌打ちと共にその動きを停止する。 標的が見えない状態で迂闊に近づくのは危険だ。 同時に反撃を受けた場合、避けようが無い。

「それが“ブランク”。敵の視界を一瞬閉じて、 目をくらませるその状態が、闇の属性が最も得意とするものです。 ほら、○○。後ろです」

 立ち止まった○○に向けて、老師の声が届く。
 ブランクによりもたらされる暗闇の効果はそう長いものではない。 一秒か、二秒か。しかしその隙は戦闘時に置いては非常に大きなものだ。 ○○は未だはっきりしない視界の片隅に、高速で近づいてくる大蜂の姿を認め、 慌てて大きく横へと飛び退く。 その真横を、大蜂の尾針が黒色の光を曳きながら通過していった。

「おやおや。先に闇の属性にどういった術式があるのか。 それをお話ししておいたほうが良かったですかな?  そろそろそういった前置き無しでも大丈夫かとは思ったのですが」

 距離を置いた位置、“堂” へと続く階段の上に腰を下ろしてこちらを眺めた老師がのんびりと 何事かを呟いているようだが、戦闘に必死な○○は話半分に聞き流す。

 敵は、真ん丸とした甲羅から短い足を四本、尻尾からは蛇の頭を伸ばした亀 ――玄武と、そして濃い紫色をした、人の頭程もある大きさの蜂が数匹。 その姿故に一応蜂とは呼んだが、 実際は老人が闇の属性を凝縮して作り出した存在だ。 動きや、秘めた力は単なる蜂とは到底呼べないものだった。
 ○○は額に伝う汗を拭い、しかし隙を見せぬよう、 視線は相対する彼らからは外さない。今日、彼らに勝つか、 せめて引き分けに持ち込めれば、 老師が従える四匹の獣全てとの戦いに耐え抜いたという事になる。

(これで老師の指導はお終い、だとありがたいのだけれど……)

 ふとそんな事を考えていると、いきなり視界が斜めに傾いだ。

「……あれ」

 呟いて、次の瞬間にやってきた強烈な眠気に、 これが新たな術式による攻撃である事を悟る。 いつのまにかついていた膝を震わせ、 慌てて立ち上がろうとした○○の目の前に、突進してくる大蜂の姿。

「――――」

 一瞬の判断。○○はそのまま受身も取らず、 薄れゆく意識に任せて身体を前へと投げ出した。 額を強打し、その衝撃で眼前に火花が散る。 同時に頭上を高速で通り抜けていく羽音。痛みで一気に意識は覚醒。 そのまま身体を横へと転がして更なる追撃、 飛来する黒色の大剣を回避した○○は、 回転する勢いを利用してそのまま立ち上がり、身構えた。

「闇の属性は、氷と同様に妨害補助に優れた術式を多く持ちます。 今の眠りをもたらす“ナイトフォール”のほかにも、石化させる呪詛や、幻覚、 恐怖を呼ぶ術式等々」

 肩で息をする○○の耳に、老師の悠々とした声が届いてくるが、 もう聞いている余裕は全く無かった。
 眼前の玄武。その尾の先端がこちらを向いて、 愛らしい形の両目がこちらを見つめている。 追撃の黒矢を口から放ったのは、確かあの蛇だ。 全く、この獣達の可愛らしい見かけは当てにならない事この上ない。

「特に石化や恐怖、眠りは喰らうと致命的な状況に陥る場合があります。 その辺りを今回はあなたに学んでいただきましょう。――玄武」

「きぅ」

 老人の声に併せて、玄武の身体に奇妙な紋様が一瞬浮かび、 そして消滅する。恐らくは何らかの呪詛か。 それによる効果が石化か恐怖等なら、 たとえ起動させても引き分けに持ち込めば良いこの訓練ならば大した事 はない筈だが、

「さて、どうですかな? まぁ、その辺りを読むのも習練のうち、 という事にいたしましょうか」

 ***

小さき聖獣が現れた!

老師

 ―See you Next phase―



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