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流浪

[臨海教室へ]を初選択

 アーレイベルグの街はその三方を巨大な壁によって囲われている。 そして、残った一方、北側は海だ。
 ハルフォン川が流れ込む河口部はシスパル湾と呼ばれ、 ファーラン植林区から筏にして運ばれてきた木材を集積する貯木場になっている。
 軍港にもなっているのだが、アーレイベルグ正規軍には海軍と呼べるほどの隊を構成できる軍艦が存在しない。 そもそも人口が少ない為、小型の船舶でなければ運用に支障が出るのだ。
 その為、港は専ら漁港として使われている。

海からの敵襲には空軍に相当するグライフの部隊が対応している。
 海中を生息域とするデモノイドは存在しないようで、 飛行デモノイドによる奇襲がたまにある程度で、 海側からの大規模な攻撃は今まで一度もないのだそうだ。 海側の防備が手薄なのはそのせいもある。
 但し、組織だって攻撃を仕掛けてこないというだけで、 海に生息する凶暴な魚類が存在しないわけではない。

 そんな港の沖合いにある小さな島に臨海教室のキャンプが設けられていた。
 敵襲の心配が少なく、手軽に訓練の相手、 即ち凶暴な魚類や甲殻類が調達できる良好なロケーションというわけだ。
 今日も港から連絡用の小船で島までやってきた○○だったが、 購買部に行く途中でとんでもない光景を目撃する。

「かき氷、かき氷はいかがですか?」

 長身の女性が水着で氷を売っていた。浅黒い肌をした……。そう、 あのデモノイドの女だ。
 何故こんなところに――考えるのは後だ。
 ○○はすぐさま武器を構え攻撃を仕掛ける。
 背後からの奇襲だったにも拘わらず、 あっさりその攻撃を片手で受け止めるデモノイド。

「なんだい、いきなり。危ないじゃないか」

 一旦距離をとって身構える。

「あら、あんたあの時の部外者さんじゃないか。 まだここにいたのかい」

 正体がばれているにも拘わらず、 こんなところまでやってくるとは一体どういうつもりなのか。
 手薄な海からの攻撃を企て、情報収集にでもきたということか。

「もうアウターズはきやしないよ。たぶんね。 あたしも別になんも企んじゃいない」

 そんな言葉を簡単に信じられるわけがない。

「だって、考えてもみなって。あたしは元々羊飼い―― あいつらの犬だったわけで、 それが飼い主の言いつけを守らず羊を狼に襲わせたんだから、 飼い主サマが黙ってるわけないだろ。しかも、 世界中どこいっても飼い主サマの領地ときたもんだ。 この街以外どこに隠れろっていうんだい?」

 確かにそういわれれば……。
 と、危ない。そう簡単に騙されはしない。 あれだけの事をしておいて許されるはずもない。
 ○○は警戒を解こうとはしなかった。

「ま、どうしても斬るってんなら、ちょっとぐらいならいいけど。 校長に雇われてここで仕事してるあたしを斬ったりしたら、 校長はどう思うかしらね」

 雇われている?

「部外者がこの島に簡単には入れないことは、 あんたの方が良く知ってるんじゃない?この前の戦いで店が潰れたって言ったらこの仕事商会して貰っちゃった。 学園にパンを納品してた伝もあったしね」

 メリルがそうであるように、 彼女の今のこの姿は普通の人間にしか見えない。 ここでいきなり斬りかかれば説明に困るだろう。

「そうそう、人間の中にデモノイドが混ざってます、 なんて事が明らかになったらどうなっちゃうかしらねぇ」

 完全に言いくるめられている。しかし、反論もできない。 今は武器を収めるしかないのか。
 だが、メリルが彼女を見つけたらただでは済まないだろう。

「そうなのよねえ。あんた、あの娘と仲いいみたいだから、 うまくいいくるめてくれないかしら?」

 お断りである。

「つれないのね。せっかく交換条件でイイコト教えてあげようと思ったのに。 ま、メリルとはなるべく鉢合わせしないようにするしかないわね。 そうそう、まだ名乗ってなかったかしら。 あたしはベルアルヘル。よろしくね」

 にっこりと微笑むベルアルヘル。よろしくするつもりなどないのだが。

「それから、夜襲とかでこっそり始末しようとか思っても無駄よ? あたしはこれでも部外者を感知する能力はメリルより優れてるから」

 今度はニヤリと笑うベルアルヘル。デモノイドのくせに表情が豊かだ。 それとも、メリルが特別表情が乏しいのだろうか……。
 思わず思考が横道に逸れてしまったが、 彼女をこのまま放置しておくわけにもいかないだろう。
 今日のところは一度学園に戻って、何か対策を考えなくては……。

 その頃、学園の片隅にあるウサギ小屋では、 普通のウサギ達が普通に食事をしていた。

(オイ、なんでオレタチだけ海にいけねーんダヨ)

(行ってどうするんダヨ)

(オレタチだってたまにはセイシュンをエンジョイしたくね?)

(そんな歳じゃねーダロ)

(そういや、もう何年になるんダ?)

(覚えてネーヨ。というか、数えてネーヨ)

(それより、あのハグレ羊飼い、 放っておいていいのか?イレギュラー化していないか? ファーストの直系じゃないよナ?)

(ああ、ファーストは全員人間になっているはずだ。 アイツは間違いなくデモノイドだ)

(なら、どうしてイレギュラー化している?)

(……アウターズってどこで生まれたと思う?)

(唐突ダナ。ソリャ、外ダロ)

(外のどこだ?外の世界か?外にある別の世界か? 外の世界のそのまた外か?)

(そんなのシラネーヨ)

(そうワレワレには知る由もない。ナラ、 この世界にアウターズが発生する可能性は?)

(……アイツがアウターズに変化するとでもいうのか?)

(サアナ。それを監視するのもワレワレの仕事ダ)

(確かに興味深い対象ダ。 何故かココにいついてるルーターと一緒に監視対象に指定しよう)

(メリルはどうする?)

(任せておけ、オレがうまくいいくるめておくサ)

(なんなら、オレがあっちについてもいいゾ)

(鉢合わせしたら困るからヤメトケ)

 ウサギ達はただ黙々と草を食んでいた。

―End of Scene―

状況
ラストキャンパス:流浪に変化


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