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体育館



 閉ざされた、大きな扉の前に立つ。

「蒼が、ここに……」

「朱鳥がほどこした呪については心配しなくてもよさそうだが、 何が潜んでいるかわからないぞ。用心しろよ」

「グズグズしてられないんだろ? さっさと行こうぜ」

 そう言うとトモキは、扉に手をかけて、一気に引き開けた。
 ごうッ! と、異常な熱気と蒸気、臭気が襲いかかった。

「うッ!?」

 思わず顔をしかめて、鼻を手でおおった。
 瞬間、全身をカビの胞子のようなものにくるまれたような嫌悪感をおぼえる。
 だが、体中に浮かび上がった輝く文字が、すぐにその胞子を焼き、消滅させた。

「朱鳥のしかけた、強力な腐の呪だ。祝に守られていなければ、 お前たち、一瞬にして腐り果て、朽ちていたぞ。 あの地霊に感謝するんだな」

「ひゅー、かんべんして欲しいぜ、まったく」

 と言ってあらためて館内を見渡したトモキは、 ギョッとなって動きを止めた。

「こ、これは……!?」

 四階ぶち抜きの高い天井から、幾つものまゆ状の物体が、 ロープほどもある蜘蛛の糸のようなもので、吊り下げられていた。



「なんだ、これ……?」

 目をこらすと、その塊のなかには、 人影らしきものがうかがえた。

「これって、まさか……?」

「ああ……、お前たちのクラスメートや、街の住人だろう」

 うっと、あなたは思わず息をのむ。
 そして、さらにそれらのまゆからのびた、 たくさんの糸……、管が、中央の床の上に横たわる、 ひときわ大きなまゆにつながっていて、 そのまゆのなかには………

「蒼!!」

 思わず飛び出しそうになるあなたの前を、ヘルマーチンがさえぎった。

「あわてるな。何か、いるぞ」

 はっとして、再びあたりに目をやるあなたとトモキ。

「フン、裏切り者のヘルマーチン。心配せずとも、お前のお姫さまは無事だ。 人間の生き血と体液を吸いながら、安らかに眠っているよ。 残念だったな。こうなっては、彼女も、もう引き返せやしない。 お前たちのことなどすっかり忘れて、 完全に我らの同族と化すだろうよ」

 と、あざけるような声があたりに響いた。

「誰だ!? どこにいる!?」

 あなたの問いに、声が答える。

「不眠症の患者が、医者に言いました。わたしは夢が、 悪夢がとても怖い。怖くて、夜も眠れないのです。 医者は答えました。まだ分からないのですか? 世界が悪夢なのですよ。この世界、それ自体が。 決して醒めることのない……」

 ぬうっと、ひとつの影が浮かび上がった。

「いい加減、気づいたらどうだ? 世界は決して醒めない悪夢で、 お前たちはそこから逃れるすべはない、ということに。 ククク……、アハハハハ!!」

 身をよじって、嘲笑する影。
 体長7、8メートルはある、無数の足をふるわす、 巨大なムカデのような怪物だった。

「たかが人間の相手など、この俺ひとりで十分。 お前たちの血も体液もすべて、 そこのお姫さまにたらふく飲ませてやるから、 心置きなく、安心して、くたばれ、死ね、塵と化せ!!」

大ムカデ(微妙に強そう)が現れた!



─See you Next phase─


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