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邂逅、魔女リーシェ

東部から西選択

 ○○は西へと続く怪しい道を探索することにした。

     ***

「あ、猫だ」



 しばらく道なりに進んだところで、先行して歩いていたハリエットが立ち止まる。
 この森で猫が鬼門だということは彼女も理解しているようだ。
 だが、今度の猫は少し様子が違っていた。

 毛並みの良いその茶色の猫は、ハリエットと○○に気付くと一声鳴いてから宙返りをした。

「うそっ!?」

 そのまま、猫は着地することなく宙に浮かんでいた。
 しかも、いつの間にかその頭には魔法使いを思わせる黒いとんがり帽子が乗っていた。

「ま、まさか、この猫がリーシェさん……」

(違うだろう)

「……なわけないよね。これじゃ猫魔術師じゃなくて、魔法猫だ」

 様子を見るハリエットと○○の前で、 空中に浮いた猫はどこからか取り出したステッキを一振りした。
 猫の眼前の空間に、輝く白と黒の結晶が出現する。

 まずい兆候だった。それが戦闘準備であることは明白だ。
 しかも、魔法猫が召喚した白と黒の結晶体は、 むしろ猫本体よりも厄介そうに見えた。
 ――結晶はまともに相手せず、猫本体を叩くのが得策か?

 だが、もはやそんなことを言っている暇は無い!

戦闘:客人の選定者



ホワイトムーン [前衛]:飛
HP:9999/9999
魔法猫キャンディ [後衛]:飛
HP:220/220
ブラックサン [前衛]:飛
HP:9999/9999

※勝利

     ***

 魔法猫は鋭い悲鳴を上げるや、 地面に着地して転がるように道の奥へと走り去って行った。

「今のは番犬? 番猫かな」


 ハリエットが後を追うように数歩を踏み出して――。

「う……」

 どさり、とそのまま前のめりに倒れ込んだ。
 とっさに駆け寄った陸蒼の身体を、違和感が突き抜ける。

(……何だ?)

 一瞬だけ目の前が暗くなり、平衡感覚が失われた。
 倒れ込む程ではなかったが、思わずハリエットの側に膝を突く。 彼女もこれを味わったに違いない。

 立ちくらみに似た感覚。いや、そうじゃない。
 ○○はもっとこれに近い感覚を知っている。そう、これは――。

「なんだ。誰かと思えば○○じゃないか」

 小道の先から、女の声がした。

     ***

 顔を上げると、見知らぬ女の姿があった。

 下着かと見紛うような露出の高い服に、 魔術師然とした大きなとんがり帽子。
 帽子と肩の上には、都合3匹もの猫が乗っている。
 両耳の上で結んだ長い髪を揺らしながら、彼女は歩いて近づいてきた。



「アタシのキャンディちゃんを撃退したのはお前だろ?」

 言って彼女は、肩に乗った猫の耳の後ろを掻いた。

 間違いない、彼女がリーシェだ。○○はそう確信した。
 だがその姿は森の魔女というよりも……。

(森の痴女?)

 そう思わせる何かが、彼女にはあった。
 勿論、こんなことは口が裂けても言わない方が得策だ。

「こっちで倒れてるのは何だ。キャンディに殺されたのか?」

 女はハリエットの脇に屈みこみ、指先でその背中をつんつん突く。 うう、とハリエットがうめき声をもらした。

「なんだ生きてるな。良しラッキョ、家に運んでやれ」

 にゃーん、と一匹の三毛猫が返事して、帽子の上から飛び降りた。
『ラッキョ』というのはこの三毛猫の名前だろうか。 だとしたら、かなり風変わりな名前だと言える。

 三毛猫がすたすたとハリエットに歩み寄った。
 まさかこの猫にハリエットを引き摺らせるつもりか、と思ったが、 そうではなかった。
 ぽん、と三毛猫が前足でハリエットを叩きつける。と、次の瞬間、 彼女の身体は煙のように消え失せていた。

 リーシェは再び三毛猫を頭に乗せてから立ち上がると、 感心して見入っていた○○に笑いかける。

「お前は歩きで良いだろ。こっちだ」

     ***

「先生、そろそろ俺はおいとま――うおっ、○○!?  どうやってこんな処に」

 案内された家に足を踏み入れると、いきなりマノットと出くわした。
 なるほど、と○○は得心する。リーシェが○○の名前を知っていたのは、 マノットから情報を得ていたせいに違いない。

「邪魔だマノット、お前の椅子は無くなった。それより客が来たんだ、 茶と菓子を用意しろ」

 ぞんざいに言って、リーシェは自分の椅子に座った。

「俺がですか!?」

「お前以外に誰がやるんだ?  何のためにアタシがお前の生存を許していると思う」

「すぐに淹れてきます」

 マノットはそそくさと奥に消えていった。

「あ。あと良くわからん娘を一人拾ってあるから、そいつの分も頼む」

 リーシェが奥に向かって声を掛ける。
 同時に「うおっ、ハリエット!?」というマノットの声が聞こえてきた。

     ***

「ああ……頭がぐらぐらする……」

 程なくして起きて来たハリエットは、用意された椅子に座ると、 額に手を当てて目を半眼にした。

 小さな円形のテーブルにはクッキーを入れたバスケットと、 人数分のティーカップが置かれている。
 机を囲んで座るのはリーシェとハリエット、そして○○だ。
 マノットは一人で壁際に立っていた。哀れだが、 それがこの家の主の命令なので仕方ない。

「それは境界を越えたせいだ。この領域は地続きではあるが、 同時に断絶もしている。群書の中の例外区域だと思え」

「うん……?」

 ハリエットは解っていなさそうな声を漏らして首を傾げた。

「寝てれば治るから安心しろ。 キャンディに勝利してここまで進めるということは、 最低限の適性があるということだ」

「良く解りませんが、解りました。……貴女はリーシェさん、ですか?」

「様」

「サマ?」

「アタシの名を呼ぶときは、様をつけろ」

「はい、リーシェ様。私はハリエットと言います」

 ハリエットは不気味なまでの素直さを見せた。
 マノットがにやにや笑いながら口を挟んだ。

「こういう理不尽な要求にすぐ応じる奴は、 大抵よからぬ下心を抱いている」

「余計な解説を入れるなマノット。で、 何の用があってここに来たんだ、ハリエット」

「実は、ある人を探して欲しいと思ってやってきました」

「良いよ」

 リーシェはあっさり言う。

「本当ですか?」

「実際に探すのはアタシじゃなくて、オサゲちゃんだけどね」

 オサゲちゃん、というのは大方猫の名前だろう。
 キャンディ、ラッキョ、オサゲとはまた、風変わりなネーミングセンスだと言える。
 もっともリーシェのセンスが風変わりであることは、 外見からして明らかではあった。

「あの、それでお代はいかほど……」

「それは、もう少し話を聞いてみないと決められない。他に何か用ある?」

「あ……ええと、実はもう1つお願いがあるんですけど」

「良いよ。言ってみろ」

「人じゃなくて、物でも探してもらえますか?」

「いける」

「じゃ、じゃあ……」

 ハリエットが、ごくり、と唾を飲む。

「“アーネムの聖筆”を、探して欲しいです」

     ***


続く・・・




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