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巨岩城砦:もう少し待つ |
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『じっと待つ』選択後、次回更新で『もう少し待つ』選択 「待て。敵の様子が気になる」 即断を控えたのは正解だった。 騎兵隊の出撃から間をおいて、城砦から別の隊がゾロゾロとでてきたのだ。 「あんな部隊の情報はなかったが――さすがですね、大尉」 歯をむくブラックベレーたち。 歩兵隊の進発をみとどけると、モルト・グラッスス大尉は命令をくだした。 「ゆくぞ」 ブラックベレーが動いた。 おろしたロープをするするとつたい、城砦の胸壁に降りたつ。 「援護しろ」 大尉が尖塔にとびこんで、2人のザクソニア兵を射殺。 エルニノが監禁されている部屋をめざす。 「――!」 先頭をきって通路を走るモルトは前方に気配を感じた。 「伏せろ!」 ザクソニア侯国軍の暗紅色の制服。 城砦にのこる守備隊だ。 守備隊殲滅 戦闘に勝利した。 「ここは、われわれが引き受けます。大尉はエルニノさま救出を」 「だが−−」 「死にはしませんよ!」 柱のかげで敵の銃撃に応じながら、部下たちが白い歯をみせる。 瞳の奥に決死の色を浮かべて。 「すまない」 敵中にとびこむ彼を、仲間の援護射撃が追った。 *** 「ごきげんよう大尉」 「カルミネラ?!」 エルニノは揺りかごのなか、すやすやと寝息を立てていた。 その様子を、聖公庁おかかえの薬師カルミネラが見守っていた。 部屋の内部は豪奢な調度品で飾られ、 とても捕虜の監禁部屋にはみえない。内心の困惑を押し殺しつつ、 モルトは言う 「エルニノさまをお早く。敵が!」 「この城砦には敵はおりませんわ」 カルミネラはゆらりと席から立ちあがり、部屋の外を指さした。 「ご覧なさい。あなたが殺した“敵兵”の顔を」 モルトは言われるがまま、死んだ敵兵の面頬をはずす。 「−−バカな!?」 現れたのは焦茶色の髪をした、年端もいかぬ少女の顔だった。 「この娘−−ルクレチアの民!」 「そう。この城砦の兵も、全て味方の義勇兵。 敵の役を演じてもらったの−−薬物催眠でね」 「この作戦は、ルクレチアの自作自演だとでもいうのか!?」 「そうよ。ザクソニア候国に、戦争を継続する国力はもうないわ。 だけどあと半年、戦争が続いてもらわなければ困る人たちがいる」 われわれは同じルクレチアの民と殺しあったというのか−− 無垢な娘の死に顔をみつめながら、モルトは放心した。 「終戦までにはそれなりの“筋書き”が必要なの。危機と結果、 決戦、そして劇的な勝利……」 モルトの握りしめたこぶしが、ワナワナと震えた。 「聖公は−−シエロ猊下は、このことをご存知なのか?」 「まさか」 カルミネラはくつくつと笑った。 「この救出作戦は、“対戦”の転換点として大切なエピソード。 あなたには“英雄”という名の、道化を演じてもらうことになるわ」 「貴様−−」 モルトが見がまえた瞬間、城砦内で大きな爆発がおきた。 「ブラックベレー、決死の救出作戦により、“救世主”エルニノの身柄を奪還 −−生存者、1名」 カルミネラの乾いた音声が、部屋じゅうにひびきわたる。 聖なる赤子エルニノは、深い眠りについていた。 外の騒ぎにも目を醒ますこともなく−− まるで魔法に魅入られたかのように。 −See you Next phase− |
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