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荒涼の船尾
単書コロセウム

 単書『コロセウム』。
 複数の闘技場が併設された大規模施設、通称『コロセウム』を舞台に、 幾多の闘士達が流した汗と血を綴った物語。その本の中での描写では、 たとえどのような組み合わせの試合であっても、観客席には多くの人が集まり、 闘技場は常に熱狂に包まれていたとされている。
 が。

「だーれもいねーな」

 闘技場の中央。〇〇と向かい合う形で立っていたエンダーは、辺り、 自分達が立つ広場をぐるりと囲うように設置された観客席に目を移し、 ぽつりと呟いた。
 その言葉に反応したのは、〇〇とエンダー、 そしてアリィとは少し離れた位置で盛り上がった両腕を組んで立つ鬼腕だ。

「今回は、単書内にある完全な『空白』を利用したからな。 物語は微塵もなく、あるのはただその舞台のみだ。 お前達が戦い合うだけならば、これでも仔細ない」

 答えに、エンダーが露骨に顔をしかめてがりがりと頭を掻く。

「その話だけどさ、正直気がすすまねーよ。こちとら、 戦いのまともな訓練なんて、 こっちきて鬼腕のオッサンとか老師の爺さんから受けたので初めてだぜ?  〇〇って“群書”の方でもそこそこ動いてたんだろ?」

 話を向けられ、〇〇は少し考え込み、頷く。
 少なくとも“サヴァンの庭”と、“ラストキャンパス”。 二つの群書の様子を確かめる程度には旅の経験を積んでいた。

「だよなー。一応、ナイフの使い方には自信あるし、 原理なんたらってのの使い方も教わったっちゃ教わったけどさ。 やっぱ俺なんてぼこぼこにされるだけじゃん。そんなんやってられんだろ。 アリィもそう思わね?」

「己は、鬼がそう告げるならば、戦いまする」

「……まぁ、お前はなんか超強いぽいからいいかもしれんけどさ。 つか、言葉遣いが戻ってんぞ」

「己は、鬼腕がそういうなら、戦います」

「己ってのは変わらんのな。まあそれは良いとして、どっちにせよ俺は──」

「〇〇に勝てば、今日の指導は無しとしていい。しかし負けるか逃げれば、 特別にみっちりとしごいてやろう」

「──マジで?」

 鬼腕が無言で頷くと、エンダーがどこか据わった目つきで〇〇の方を見てきた。
 気味が悪いと一歩退いた〇〇に、エンダーは低い声でこう告げた。

「○○よ、先に言っておく。今日の俺は超本気ですので覚悟してください。つか、お前空気読んで手加減してくると非常に嬉しいです」
 
 なんて現金な。

「つーわけで、アリィは後ろでテキトーに見てな! この俺が華麗なる短剣捌きで○○に勝利する様をな!」
 
「…………」
 
 アリィは○○とエンダーを交互に見比べて、少しの間。
 
「貴方が、○○に一人で勝利するのは難しいと、そう己は量りまする」
 
「煩いな言うなよ俺だって何となくわかってんのに!!」
 
 がーと吠えるエンダーをアリィは無表情で受け流して、
 
「だから──桜枝」
 
 ぽつりと一言そう呟く。すると、彼女の手の中に木枝が音も無く姿を現した。
 長さは二の腕程度。アリィが軽くそれを振ると、枝先を彩っていた桃色の花びらが見る間に散って、踊るように彼女の周囲を舞い始める。
 ここへとやってくる途中に聞いた話では、エンダーが主に短剣を操って戦うのに対し、彼女の武器となるのがあの細い小枝なのだという。
 枝一本で一体どう戦うのかと話を聞いた時は疑問に思ったものだが、成程、こうしてアリィの手の中に突然出現したそれは、単なる木の枝とは到底思えぬ気配を内から発していた。本の世界では“神の化身”として扱われていたというアリィが、己の得物として呼び出すものなのだ。何の力も無い只の枝である筈がない。
 彼女はそれを軽く振ると、
 
「己が、貴方を助けます」
 
「……そりゃ助かるね。つか、冷静に考えると俺が前よりお前が前の方が勝てる確率あがんね?」
 
「貴方は先刻、『この俺が華麗なる短剣捌きで○○に勝利す』」
 
「あーあーあーキコエナーイ……っ、判った、判ったよ!! 俺がメインで頑張りゃいいんだろうが!」
 
 エンダーは半ばやけっぱちのように叫ぶと、両手に短剣を逆手に構えて、
 
「鬼腕のオッサン、合図!」
 
「そう先走っても良い事は無いが──まぁ、いい。では、始めよ」
 
迷い人二人が現れた!

打ち合う力

─See you Next phase─


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