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荒涼の船尾

この箱舟は、エルアーク──つまり救いの船が基盤となっている中央の大島と、 そこから空中水路で結ばれた小島八つの計九島で構成されている。
 小島は船の前部から一つ、左右の側部から後部にかけて七つ浮かんでおり、 〇〇はその内の一つ、後部から伸びる島へと足を向けた。
 空中水路を渡り、島を覆い尽くす森の中を暫く進んでいると、 木々の向こうに石畳の白色がちらりと見えた。あそこが箱舟の住人の一人、 巨漢の竜人“鬼腕”の居所だ。

     ***

荒涼の船尾には、珍しく自分以外の客が居た。

「○○か」

「○○だ」
 
「○○」

 まず鬼腕が振り返り、それに釣られて赤衣の少年がひょいと覗き込むように顔を出し、 最後にドレスの娘が何を考えているのか良く判らないような表情のままこちらを見た。

 ──三人揃って、一体何をしていたのだろうか。

 ○○の素朴な疑問に、鬼腕が横に大きく裂けた口を開く。

「こいつらはお前と似たようなものだ。ツヴァイからの指示で、 自分や老人の所に教えを請いにやってきている」
 
「なーなー。○○も、このオッサンに色々やらされてんの?」
 
 と、鬼腕の言葉を遮るように、ひょこひょこと赤衣の少年── ○○と同じ“迷い人”であるエンダーが傍へと寄ってくる。
 別に強制されている訳ではないが、やらされている、 といえば確かにそうなのだろうか? 戸惑いながらも○○が頷くと、エンダーは「ほー」と感心顔。
 
「つーか俺、こういう荒事専門の真面目な訓練なんてやったことねーから、 めちゃキツイんだけど。○○は結構こういうのいけるクチなの?」

 いけるかどうかは良く判らないが、既に群書世界で幾つかの戦闘はこなし、 それなりにやってきた自負はあった。

「人は見掛けに依らないって奴か」

 エンダーに一体どうゆう風に見られていたのか気になる。

「聞きてーの?」

 ……止めておこう。気が沈みそうだ。

「賢明だな。ま、見掛けに依らないって話なら、アリィの方がひでーけどな」

 言って、エンダーが後ろを振り返って鬼腕の後ろに立っていた娘の方を見る。 エンダーと○○の視線を受けて、ドレスの娘──こちらも同様、“迷い人” であるアリィは表情を変えないまま、しかし目を一度瞬かせた。

「何でか知らんけど全く平気くさいんだよな、こういうの。 単に運動するだけじゃ全然バテねーし、しかもなんか動きがすげーし。 アリィ、お前姫様から聞いた話じゃ、深窓の御嬢様みたいな生活してたんじゃねーの??」

「……深窓?」

 意味が判らない、という風に首を小さく傾げるアリィ。その横で、鬼腕がかふ、 と口元から一度息を吐き、

「その娘は自分と同じで、普通の人間とは根本的な部分で身体の造りが違うせいだろう。 代わりに、本の中では他者からの攻撃に対する耐久力が無いようには見えるが」

「あー、確かに。耐久力はないけど、なんかカタイんだよな。力が弾かれてる感じで」

「その辺りは、恐らく“記名”による反発が影響しているのだろう。 この娘は元が強存在故、本に進入した際には、 本の世界から普通の人間よりも強い反発を受ける。 そのせいで他者からの干渉が通り辛く、しかし自分の存在自体も不安定だ。 力が通ってしまえばそれに耐える事は難しい。そんな処か」

「はー、成程ね。って、アリィ? お前話判ってる?」

「……?」

「一応、お前の話なんだけどなこれ。要はお前、硬い癖に打たれ弱いって事なんだけど」
「硬うのですか。己は」

 少し考え込んでから、ぷにぷにと自分の腕を突くアリィ。

「柔らかい」

「いや、そういう意味じゃねーんだが……まぁいいか」

 あまり突っ込んでも意味は無いと感じたか。エンダーは話を切り上げ、鬼腕の顔を見上げる。

「で、オッサン。今日は何やんのよ」

「……そうだな」

 鬼腕はその巨大な掌で己の顎を撫でて、エンダーとアリィ、 そして○○の方へと順々に視線をやり、そして口元をにやりと引き上げる。

「丁度いい。○○、少し手伝っていけ。そこの二人。今日は、○○とお前達でやり合ってみろ」

「あー? ○○と?」

「…………」

 鬼腕の言葉に、エンダーが窺うようにこちらをじろじろと、 アリィは相変わらず何を考えているのか良く判らない表情を○○の方へと向けた。

「どうだ、○○よ。“迷い人”同士、一度拳を打ち合ってみるのも良い経験になるだろう。 それにお前達は同じ“迷い人”でも流儀が大きく異なるからな」

 何だかおかしな流れになってきたが………さて、どうしよう?


─See you Next phase─


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