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荒涼の船尾
扉と鍵

扉と鍵

 この箱舟は、エルアーク──つまり救いの船が基盤となっている中央の大島と、 そこから空中水路で結ばれた小島八つの計九島で構成されている。
 小島は船の前部から一つ、左右の側部から後部にかけて七つ浮かんでおり、 〇〇はその内の一つ、後部から伸びる島へと足を向けた。
 空中水路を渡り、島を覆い尽くす森の中を暫く進んでいると、 木々の向こうに石畳の白色がちらりと見えた。あそこが箱舟の住人の一人、 巨漢の竜人“鬼腕”の居所だ。

     ***


「そういえば……」

 船尾で出会った鬼腕にそのまま単書『コロセウム』へと引き込まれた〇〇は、 辺りを見回してふと思う。
 闘技場控え室。この書物に進入した時に現れるのはいつもここだ。
 後はそのまま鬼腕から簡単な説明を受けつつ、 部屋の扉を潜って別区画にある闘技場を目指すのだが。

(扉は、一つじゃない?)

 いつもの闘技場へと出るために使っているものの他にも、 似たような扉が部屋のあちこちに存在する事に今更気づいた。
 これらの扉は、一体何処に通じているのだろうか?

「別の闘技場だ。説明していなかったか?」

 聞いていない。
 短く答えると、鬼腕はふむとその巨大な手で長く伸びた己の顎を撫で、 一息。

「この“コロセウム”は、一つではなく複数の闘技場を所有している。 いつも使っているのはその内の一つ、一番下位のものだな。 この控え室は各闘技場の中央に配置されていて、部屋にあるそれぞれの扉が、 各闘技場へと向かう通路に繋がっている」

 なら見にいってみようか。

「止めておけ。無駄だ」

 と、そちらに歩きかけた〇〇を、鬼腕は短く止める。
 何でも、扉には鍵が掛けられていて開かないのだという。 そして開くための鍵はここにはないのだと。

「この本の“設定”の問題だな。普段使っている闘技場があるだろう。 あそこの長格の者を打ち破る事で鍵を授かり、 そして他の闘技場を縄張りとする強者と戦う権利をの者を打ち破る事で鍵を授かり、そして他の闘技場を縄張りとする強者と戦う権利を得る。 そんな設定があるのだよ。だから今のお前には無理だ」

(……ふむ)

 荒っぽくはあるが、単純で判りやすい話だ。
 要するに、その長と戦って勝てばこの扉の先を見ることが出来る、 と。

「とはいえ、その長とやらと戦うには、この闘技場で何百、 何千回と勝たねばならないがな。さて、今から始めて……一年先か二年先か。 いや、一年二年で済めばいいが」

「…………」

 その時、恐らく自分は酷く情けない表情をしていたに違いない。
 鬼腕はそんな〇〇の顔を見て呵々と大口を開けて笑うと、

「──ま、勿論裏技もあるがな。お前、“黒星”を知っているか?」

 鬼腕の問いに〇〇は頷く。箱舟左翼の大建物“玩具箱”の主である、 鼠人の小男の名だ。

「奴が、ここの扉の穴を誤魔化す仮想鍵を持ってるはずだ。 所詮は紛い物だから、一回きりの使い捨てだがな。そいつがあれば、 長などと戦わなくとも扉の向こうにある他の闘技場へと行ける」

 鬼腕が『コロセウム』という書物に出入りし始めて直ぐの頃、 この封じられた扉を開けるために黒星に協力を求めたらしい。 そして当時の産物が、その使い切りの仮想鍵なのだという。
 最初、 鬼腕はその類稀なる腕力で持って扉を完膚なきまでに破壊して先へと進んだのだが、 どうやら正規の手続き──少なくとも、 鍵で持って扉を開けるという手順──を踏まないと正しく闘技場へ辿り着けないらしく、 その時は結局、 出口に絶対辿り着けない通路を延々歩く羽目になったとか。

「黒星からあれを手に入れるには、お前の持つ“挿入栞”との “関連付け”が必要だ。あの鍵はそう強い力を秘めたものではないから…… “金貨”を使わずとも、“存在の紙片”があれば良い筈だ。 それを手に入れる事があれば、黒星の所へと持っていってみるといい。 ある程度の数が揃っていれば、紙片が秘める力を利用して、 奴がお前の栞と鍵とを関連付けてくれる筈だ」


─End of Scene─







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