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エアゾール製造工場12

【備考】
動力炉破壊後
薬品工場周辺

 しかし、その疑問はすぐに解けた。
 無宿者は、僕たちの目をしっかりと見つめ、衝撃の事実を明かした。


無宿者

「この世界を良くしようと動くと、もう一つの世界がマイナス方向に動いていく」

 この世界ともう一つの世界……。
 つまり、東京はふたつある。

「君が存在していた東京−−それが現実世界だ」

 僕の現実世界−−しばらく忘れていたんだ。

 めまいがするほど複雑な事態を、無宿者は懇切丁寧に説明してくれた。
 僕たちは現実世界と平行して存在する“もうひとつの東京”にいたのだ。
 しかも、ふたつの東京は、幸福と不幸の総量を分け合って存在していた。

 一方が幸せになれば、もう一方の幸せが減り、 その隙間を一方から押し出された不幸が埋める。

 この世界の幸福を導く労働者の団結は、 僕の現実世界になんらかの影響を及ぼすということ。

 無宿者はこの連鎖を警告するために、 この世界にとどまり続けているのだろうか?
 彼は続ける。

「本気でふたつの世界を幸せにしたいのなら、 何もせず、ただあるがまま、流れにまかせるのが一番いい」

 それは僕のありふれた日常そのものだった。
 東京湾に漂うクラゲのような日々。
 抜け出したかったタイクツなリアル……。

 思えば、今、この東京で、僕のささやかな希望がかなっていることに、ふと気付く。

 ここでは、僕は英雄で、隣にはスズがいて、生活は厳しいけれど、 少なくともタイクツからは抜け出していた。


スズとプレイヤー

 しかし、無宿者は僕たちに現実をつきつけた。

「どちらの世界でも透明な存在となる者だけが、この世界を行き来できる。 どこで生きたとしても、誰も気づきはしない道ばたの石のような存在。 海に浮かぶクラゲのように揺れるだけの人生。それが嫌なら、 さっさと現実に帰ることだな」

 −−現実世界へ帰る−−。

 この言葉が、僕の体の中に響き渡った。
 それは、思いもよらなかった素晴らしいアイディアに思えた。
 なぜ、今まで思いつかなかったんだろう?
 エアゾールの吸い過ぎか?


スズとプレイヤー

 いや、僕は、この世界の過酷な状況を楽しんでいたのかもしれない。
 探し続けていたスリルが、この世界にはあったから。

 けれども、それも今日で終わりだ。
 このまま続ければ、僕の世界、本当の東京が壊れてしまう。

 過酷な労働、リンチ、懲罰房、戦争、爆撃、食料難。
 確かにスリルはあった。
 この世界では、いつ死んだっておかしくないほどに。

 死んでしまったら、意味がない。
 命がけのスリルなんていらない。
 僕は安全な場所で、スリルを楽しみたかっただけなんだ。

 今が潮時だ。現実世界に帰ろう。

 でも、どうやって?
 浮かんでくるたくさんの疑問符をあびせようとしたときには、 無宿者の姿はすでに消えていた。

 スズはスズで、無宿者に問いただしたいことがあふれているようだった。
 僕たちは、無宿者を捜すことにした。

−End of Scene−



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