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荒廃したビル群2


 突如、モンスターは大きな唸《うな》り声をあげ、 地響きとともにその場に倒れ込んだ。
 どうやら先ほどの僕の攻撃が、じわじわとダメージを与え続けていたらしい。

「勝った……」

 緊張がとけて、その場にヘナヘナとへたり込む。立ち上がる力も出ない。
 全身に冷や汗をかいていた。

 いったいなんだよ、これ?
 ええい、ままよ、と勢いよく目を閉じてみる。夢ならとっととさめてくれ!

 その時、体に走る鈍痛。
 顔をゆがませながら目を開くと、恐ろしい形相の軍人に、 僕は取り押さえられていた。
 不覚。軍人は、僕の腕をきつく締めつけながら、威圧的に言い放った。

「無線機を出せ」

 無線機……? んなもん、ないよ。
 しかし、軍人は、チワワのように無抵抗な僕からあるものを没収した。
 
 携帯電話だ。

 なるほど……。って、感心してる場合か!?
 没収された無線機――携帯には見知らぬアドレスのメールが1件入っていた。
 さっき届いた、自称、青年実業家からのメールだ。

 軍人はメールを見て、相変わらず、自分がルールとばかりに横柄に言う。

「敵国の工作員じゃなくて、工場の新顔か。それならそうと早く言え」

 僕としては、敵国の工作員はもちろん、工場の新顔という話にも、 身に覚えはないのだが。
 軍人は、早とちりをチャラにでもしたいのか、言葉を続けた。
 あまりにも衝撃的な言葉を……。

「敵国の空襲で、東京タワーが陥落した。空襲はまだ続く。 危険だから、工場まで送ってやる」

 僕は、事態を飲み込めないまま、軍人にトラックの荷台に押し込まれた。
 荷台には、機械の部品が詰め込まれていた。なにかの部品の運搬中?
 というか、僕自身が、荷物になった?

 ――そんなことより、いったいここはどこなんだ?

 僕は、おそるおそる荷台から顔を出し、あたりを見渡してみる。
 見える景色から察するに、ここがお台場であることは間違いなさそうだ。
 でも、僕が知っているお台場とはまったくちがう、悲惨な状態だった。
 地面はひび割れ、場所によっては地面が大きく波打ち、粉々に砕けている。
 あたりの建物もほとんどが崩壊していて、 かろうじて残る壁には無数の弾痕があった。
 軍人の言うように、どうやら本当に戦争がおきているらしい。
 まるで何年も前から、戦争しているかのような、荒廃ぶりだ。

 壊滅状態の島の中で、唯一そびえたつ大きな建物へトラックが滑り込む。
 本当なら、脳天気な球のついたテレビ局のビルがあるはずのあたりだ。
 でも、ここにそびえるのは、レンガ造りの高い壁に囲まれた堅牢 《けんろう》な工場だった。
 いや、工場というよりは刑務所と言った方がしっくりきそうな雰囲気だ。

 荷物のように運ばれた僕は、軍人の怒号とともにトラックから下ろされた。

「もたもたするな! 4649番!」

 ヨロシク? この番号が僕の新しい名前だった。

 ここは、兵器生産工場。
 お台場は、島全体が兵器会社の敷地で、監獄島と呼ばれていた。


─End of Scene─


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