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黒煎の客間

自分と同じ境遇。“迷い人”と呼ばれる存在となった、あの少年と少女。
 初めて出会った、立場が同じ者。
 仲間意識という程でもないが、多少なりと気に掛かるのは否定できない。
“主の書室達”では、ツヴァイによる状況の説明を優先させていたため、 ○○は殆ど彼らと話していない。向こうにしてみても、 ツヴァイの横についている無口な付属品程度にしか見えなかっただろう。
 その印象を払拭すべく、改めて彼らに挨拶しに行くのも悪くはあるまい。 そんな事を考えながら、○○は“箱舟” 地上部に聳《そび》える巨城の階段を登っていた。
 彼らに割り当てられた部屋の場所は、ツヴァイから事前に聞いている。 城の中層、○○がこの箱舟で目を覚ました部屋の近くらしい。
 城の内装を目印にしつつ、○○はてくてくと城内を歩いて暫く。

「……?」

 正面。T字の廊下を、一つの影が通り過ぎた。
 若干小さい、赤い衣服を着込んだその人影は、こちらに気づかないまま、 ○○の視界を左から右へと横切っていく。
 誰だろう、と足早に分岐点まで移動。影が去っていった廊下を見る。 赤い服に、白色の外套を翻して走っていく影は、 少し速度を落とすとそのまま緩やかにカーブした廊下の向こうへと消えていく。
 ○○は、はて、と眉を寄せる。○○の知る箱舟の住人の中に、 今の外見と一致する者が見当たらない。けれども、 どこかで見た姿形であるようにも思うのだが。

「あら、○○さん?」

 と、そこへ声。
 声がした方向は、今○○が見つめていた廊下の丁度反対側だ。 両開きの扉は片側だけが大きく開いており、 そこからひょいとくすんだ金色の髪が揺れている。
 微笑みの中、一度目を瞬かせて○○を見上げるその娘は、 この箱舟の管理者であるツヴァイだ。
 丁度良いと、今去っていった人影の話を彼女にすると。

「ああ、それは──」

 曰《いわ》く、その影は自分が会いに来た二人のうちの少年の方らしい。  だから見覚えがあるような気がしたのか、 と○○は頷き掛けて、あれ、と首を捻る。
 確かに髪色はツヴァイの言う通りあの少年のもの。 明るい金髪であったように思うが、しかし服がまるで違う。
 その事を話すと、ツヴァイは扉から覗き込むようにしていた身体を一歩、 廊下側へと出して、手の中にあるものを○○に見せる。
 彼女が持っていたのは、薄い茶色に染まった麻布の束だった。

「あのお二人、着ている服に色々と問題があるように思えましたので、 こちらの用意した服に着替えていただいたんです」

 つまり、今彼女の手にあるそれが、先刻まで少年が着ていた襤褸《ぼろ》。
 そして、先程走っていった赤い影、 つまり赤色の服を着た人物が、ツヴァイが用意した服に着替えた少年だったと。

「ええ。女性用の服なら私やディーちゃんのコレクションがあるから何とでもなるのですけれど、 男性用は少し手間でして。黒星や准将に手伝ってもらって漸く」

 ……ディーちゃん?

「ああ、私の大切な大切な妹ですわ。すんご〜くかわいいですよ?  といっても、今はこちらには居ませんけど。──それで、 ○○さんはどういった御用件でこちらへ?」

 不思議そうに問われて、○○は苦笑する。
 確か、自分の同類であるあの迷い人二人と少し話してみてはどうでしょうかと 持ちかけたのはツヴァイの方ではなかったが。
 言うと、ツヴァイは「あらそうでした」と口元に手を当ててにっこり微笑む。
 それは完璧といって良い程の微笑みだったが、 意味するところは単なる誤魔化しである。

「では御話の方、なさいます? 男の子はなんか慌てて出て行っちゃいましたけど、 女の子はこちらの部屋にまだいらっしゃいますよ?」

 そういえば、少年の方は何故出て行ったのか。 何やら結構な勢いで走っていったのだけは見たが。

「さぁ? 何だか慌てていらっしゃったのは確かですけれど、詳しくは。 まだ途中だったのにそのまま凄い勢いで走っていっちゃいましたから」

 笑みに困った色を混ぜて首を傾げるツヴァイ。どうやら彼女も、 少年が出て行った理由を正確には把握していないらしい。

「一応、木霊さんも一緒に付いていきましたから、 迷子になるということは無いでしょうけれど。あの子を追いかけるのでしたら、 私がナビゲートしますが?」

 言葉と視線。その二つでツヴァイが問うてくる。

(……ふむ)

 ○○は迷うようにツヴァイから視線を外す。
 選択肢としては二つ。
 部屋にお邪魔して少女の方と話すか、 それとも先程出て行った少年の方を追いかけるか。

─See you Next phase─

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