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聖公の間



心もたぬ友

心もたぬ友

 戦闘に勝利した。

「ガァウァアア!!!」

 渾身の一撃が友の大腿骨を粉砕し、 起き上がろうともがくリュウシンの咆哮が部屋じゅうに響いた。

「カルミネラ――!」

 次の目標をも一気にたたみかけるべく、 深紅の魔女と対峙する。
 その時モルトの身体が、突然硬直した。

「――!?」

 呼吸が止まった。

しばらく何がおきたのかわからなかった。
 胸に毒針が刺さっていた。
 熱い血が噴きでる。
 遅れて激痛が走り、がくり、と膝をついた。

「終わりね。呪縛の秘密も解けぬまま――無様だこと」

 聖公シエロが座する黄金の椅子のそばで、 ニードルガンをかまえた魔女が、怪しい微笑を浮かべていた。

「モルト。あなたは“完全体”のまま泳がせておくには、 危険すぎるストラルドブラグのようだわ」

 猛毒と出血によるダメージは大きく、 魔獣の組織を移植された彼の再生能力をも上回っていた。
 体内を熱い毒がめぐり、視界が急速にかすんでゆく。

「最高の被験体を失うのは惜しいけれど、 一度“死んで”もらうことにするわ―― 殺傷力のみを追求した、正真正銘の猛毒でね」

 ひざをついた彼のまえに、カルミネラが歩みよった。

「ひと思いに逝けないというのは残酷なものね。 生身の人間なら確実に即死するほどの傷なのに」

 紅い瞳の奥で、 まるで焔のような光がちらちらと燃えていた。

「次に目を醒ましたとき、あなたは生まれ変わっているわ。 わたしの忠実な不死兵――“生ける屍”としてね!」

 カルミネラはゆっくりと、狙いをさだめた。

 「さあ――慈悲の一撃よ」

 モルトは“真の死”を覚悟した。狙いすました毒針が、 魔女の弓銃から放たれ――

「ダメだ!」

 カルミネラの目の前に、エルニノが手を広げてとびこんだ。

「エルニノ!?」

 ドドドッ!
 毒針は全弾命中し、 ちいさな胸から深紅色の血を噴出させながら、 エルニノはその場に倒れた。

「――この子!」

 ちいさな上体がぐらりと傾き、 ゆっくりと床にくずれおちた。

エルニノ

「ご……めん。せっかくモルトが助けてくれた――のに」

 エルニノは最後の力をふりしぼって弱々しく微笑み―― 眠りに落ちるような表情で、まぶたを閉じた。

 世界から希望が消えた。
 モルトはそれを無音の光景として知覚した。 すでに聴覚は、その機能を喪失しつつあった。

 深紅の魔女はまぶたを閉じ、首をふった。 細い指がニードルガンの引き金をなまめかしく這う。
 血の紅のくちびるが動き、何ごとかを告げた。 カルミネラの口の端がもちあがり、 充填された毒針が至近距離で発射される。

 モルトの身体はそれを痛みではなく、 ただ緩慢な衝撃として受けとめた。

 ――セルリア、すまない……

 視界が暗さを増してゆく……
 彼は自分が“真の死”を迎える事を知った。

―See you Next phase―

[行動選択]
選択肢無し





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