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貴族の邸宅へ

エビフライ3本所持して再度サナトリウムへ

 準備は整った。
 マイケルは満を持してサナトリウムに足を向け、 ピーテルの部屋を訪れることにした。

     ***

「あ、こんにちは」



 扉を開けると、ベッドで身体を起こしていたピーテルがぴょこんと頭を下げた。
 部屋には彼の他にハリエットと看護師の姿があり、それぞれマイケルと軽く挨拶を交わす。

「じゃ、明日からお薬ですから、カーテンはまた閉めておいて下さいね」

 看護婦が微笑んでそう言ったが、ピーテルは唇を尖らせる。

「暗いと本が読めないから、退屈なんだよな……」

「うーん、それは仕方ないですね。薬の間だけだから、 我慢してもらうしか」

 言いながら看護師は身を屈めてベッドの下を覗く。
 前にもこんなことをやっていた気がするが、 これは一体何の儀式なのだろうか。
 ハリエットも同じことを疑問に思っていたようで、遠慮がちに口を開く。

「あのー、それは何を見てるんですか? あ、 前に何かイイモノでも隠してあったとか?」

 まさか、と看護師は顔を上げて笑った。

「この間、大きな蜘蛛がいたんですよ、この部屋」

「なんだ。そんなもん、 出てきた瞬間にこのハリエットさんがぶち殺してあげるわよ」

 ハリエットの言葉を聞いて、看護師は何故かくすくす笑った。

「ま、お姉ちゃんはそう言うだろうと思ってた」

 ピーテルがため息をつく。

「何よ」

「私もね、ほうきで叩き潰してやろうとしたんです。 そしたら、ピーテル君に怒られちゃいました」

 看護師の説明に、ハリエットは「はー」 と気の抜けたような相槌を打った。

「別に、怒ったわけじゃ……」

 ピーテルが決まり悪そうに言った。

「蜘蛛は益虫だから……ハエや蚊を食べるやつもいるし、 殺す必要ないって、そう思ったんだ」

 ピーテルが微妙に視線を逸らしながら説明する。

「でも、すっごく大きかったですからねー。 ここの室内に出るとちょっと問題になりそうで」

「良いんじゃないかな。そのでかい蜘蛛にピーテルが食べられたら、 それもまた運命だわ。自業自得だわ」

「そこまで大きくはなかったですけど」

 看護師が苦笑する。

「まあ、とりあえずまた出てくるようだったら連絡をお願いします」

 そう言うと看護師は「じゃ、またねー」 と気さくな挨拶を残して、ピーテルの部屋を後にした。

     ***

「さて、まあ蜘蛛はどうでも良いとして…… エビフライの方は確保できた?」

 ハリエットの問い掛けに、 マイケルは首肯して用意したエビフライをちらりと見せる。

「お、3つも用意してくれるなんて念入りですな! これで作戦の成功は疑いなし!」

「エビフライ? なんで? 食べるの?」

 ピーテルが訝しげな視線をハリエットに向ける。

「あんたには関係ないから心配しなくて良し!  それじゃ早速出かけるか!」

 ハリエットは勢いよく椅子から立ち上がると、ぺちりと手を叩いた。
 左手だけいつもの篭手を着けていたため、どうも音にキレが無い。

「出かけるって、どこ行くのさ」

「え? えーと、ちょっとそこまで……みたいな。えへへ」


[ハリエット画像]
 歯切れ悪く返答して作り笑いをする姉を見て、 ピーテルはまたため息をついた。

「悪だくみだってことは判った。……どうせまた、 村のこと考えてるんだろ」

“村”という言葉に、 部屋を出ようと歩きだしていたハリエットがぴくりと反応する。
 ピーテルは構わず、その背に向かって先を続けた。

「もう忘れようよ。別に調べる必要なんか無いだろ。 何があったにしろ、皆もう生きてるわけが――」

「うるさいな!」

 ハリエットが振り返り、大声で弟の言葉を遮った。
 それからばつが悪そうに唇を噛むと、大きく息をつき、 今度は声を落として先を続ける。

「あんたは、それで良いの? はいそうですか、 って納得していられるの?」

「僕は――」

 ピーテルは何かを言いかけたが、結局言葉を続けることはなく、 そのまま視線を逸らした。

「私はできない。自分の眼で確かめないと、絶対に信じられない」

 ハリエットが、うつむき加減になった弟の横顔を見つめる。

「絶対諦めないから」

 そう言ったハリエットの眼差しには、これまでにない真剣な色が見えた。
 二人が何を話しているのかは良く解らなかったが、なんとなく他人は立ち入れない雰囲気だ。

「ま、何だか知らんがエビフライも用意できたみたいだし、 予定通り出発と行こうじゃないか」

 声に振り返ると、 いつの間にかマノットが柔和な笑みを浮かべて立っていた。

「だから何であんたが湧いてくんのよ!」

     ***

 そんなやり取りがあってからおよそ1時間の後、 マイケル達はルブター・デルシャールの屋敷を目指して彼の敷地の中を進んでいた。
 ハリエットの説明によれば、この辺りは既にルブターの家の庭にあたる区域らしい。
 とは言っても、今のところ周囲の光景はそこらの山野と殆ど変わらない。
 地面は起伏に富んでおり、小さな森や泉がそこかしこにある。
 ただ、とにかく道だけは通っていた。お蔭で歩くことに関しては、全く苦労がない。
 そのまま道を歩き続けて、どのぐらい経った頃だろう。

「待った。向こうから何か来る」

 勝手に同行して来ていたマノットが、止まれのサインを掌で示した。
 ハリエットが耳に手を当て、何か遠くの音を聞くような仕草をする。

「ん……この音、馬車かな。あんた耳いいね」

「ちょっと隠れた方が良いだろう。そこの脇でやり過ごすか」

 マノットが手近な木立を指差した。

「そうしよそうしよ。でもまー、 見つかっても大した問題にはならないと思うけど。まだ今はね」

     ***

「……よし、もう良いだろ。誰が乗ってたか見えたか?」

 木立の陰で馬車の通過を確認すると、 マノットは立ち上がってそう訊いた。

「多分ルブターさんでしょ。見てないけど。 っていうか顔も知らないけど」

「おめーの華麗なる調査では顔も判らなかったのか」

「私は家の裏手とかでウロウロしてただけだし。 とにかく家まで行こ行こ!」

 ハリエットがにこやかに宣言する。
 マイケルの胸中は逆に不安で満たされた。

     ***

 しばらく道沿いに進んだ先に現れたのは、 今度こそ“庭”と呼べる場所だった。
 ただし、庭は庭でも複合庭園だ。 それぞれ少しずつ違った趣向の庭園が複数並び、 相互に道で繋がっている。
 広大な庭園の奥にはなだらかな丘があり、 その上に屋敷らしき影があるのがここからでも良く見えた。
 もし上空から見たとすれば、 中央の屋敷を取り囲むようにして幾多の庭園が配置されているに違いない。




「なんという無駄な庭園だ。何種類作れば気が済むんだよ」

「だよねー。隠れ場所も多いから忍び込むのは簡単で良いけど。 あ、ほら見て見て! あれ楽しいんだよ、迷路庭園!」

 ハリエットの指差す先では、 綺麗に刈り込まれた背の高い生垣が滑らかなカーブを描いていた。

 おそらく大きな円形となっているであろうその庭園では生垣が迷路の壁状になり、中心にある高台を何重にも取り囲んでいる。
 もちろんそれは侵入者を迷わせようなどという意図で作られたものではなく、単なる造形上のお遊びに過ぎない。

「ピーテルとか喜ぶと思うんだよねー」

 ハリエットがうずうずした様子で迷路庭園を遠望する。
 どちらかというとピーテル少年よりもこの姉の方が喜びそうに思えたが、それは口に出さないでおいた。

「楽しそうだな。でも先に用件を済ませた方が良いんじゃねーか。 仕事の前に庭で遊ぶ泥棒なんて聞いたこともない」

「おっと、そうでした」

 ぺろりとハリエットが舌を出す。

「じゃ先へ行くぞー……って、何か出た!」

庭のマイマイ


青マイマイA [前衛]
HP:600/600
歌うキャロット [後衛]
HP:200/200
青マイマイB [前衛]
HP:600/600

○○は青マイマイの殻を手に入れた!
○○は人参を手に入れた!

     ***

「ふー、大丈夫? そりゃそうだよね」

 ハリエットがマイケルの無事を確認して、口元を緩める。

「うむ。この程度の相手なら何も問題はない」

 マノットが得意顔でそう答えた。

「あんたは後ろで見てただけでしょーが!  とりあえず庭園には用事ないから、ささっと離れまで登っていくよ」

 言って、すたすたとハリエットは先を歩き出した。
 目指すは庭園地帯の先、丘の上に建つルブター・デルシャールの邸宅だ。

─End of Scene─





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