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鬼腕5戦目
貫く者達

「来たか」

 いつもの定位置。闘技場へと続く階段前で待機していた〇〇は、 隣に立つ鬼腕の言葉に顔を上げて闘技場の方を見る。
 闘技場を挟んで反対側にある通路ではなく、 右手側にある木製の大柵がぎりぎりと音を立てて開き、 その奥から巨大な物体が次々と姿を現す。どうやら、 今回の敵は人ではなく獣であるようだ。

「獣というか、虫だな。ホーンビートル── 鋭い角を武器として持つ大甲虫だ」

 どうも『コロセウム』では、人対人の試合の他に、 こうした力持つ大動物達との戦いが頻繁に組まれるらしい。

「人間同士がやり合うというのも良いが、 ああした化け物を相手に小が大を克す戦いというのも見ごたえがある、 という事らしいな。勿論、 巨大な化け物が小さな人間を弄る様を喜ぶ客向けというのもあるが」

 趣味の悪い話だが、そもそもこうした闘技場というものが、 殴り合い、殺し合いを見世物にする類。所詮は程度の問題、 今更どうこうという話でもないのか。
 〇〇の言葉に、鬼腕も赤黒い肩を器用に竦めてみせる。

「この単書の話の原型は『大崩壊』 当時から逆算してもかなり昔に作られた物語だと、 箱舟の管理人殿に聞いた事がある。娯楽とは、 古来より今まで常にそういうものなのかもしれんな──と」

 闘技場に響く、〇〇を呼ぶ声。鬼腕は途中で言葉を切ると、 ふむと唸って己の顎先を軽く撫でる。

「さて、では助言か。……〇〇よ、 あの虫達の攻撃方法程度は推測できるか?」

 問いに、〇〇は呆れたような顔。
 どう考えても、あの頭部から長く鋭く伸びた角だろう。


「正解だ。やつらはあの角を使った強烈な貫通攻撃が主力だ。 ただあれをかざして突撃されるだけでも、かなり手強いのだが、 あのホーンビートルは更にもう一つ」

 鬼腕が顎から手を離し、長い腕を伸ばして虫の──口元を指差す。

「あそこから特殊な液体を吹くのだが、 それを浴びると身体が貫かれやすくなる」

 ……貫かれやすくなる?

「ああ。理屈は判らん。あの虫が持つ一種の呪いか、 超常的特性か。そういう類のものらしいが……あれを浴びた部分が、 なんというか、刺される事に対する抵抗が無くなる。 液を浴びれば浴びるほどな」

 つまり、その液体を浴びせてからの角による攻撃が、 あの虫の主戦法だと。

「そういう事だ。浴びた後に角の一撃を受ければ、 余程防御を固めていない限りはまず戦えなくなる。 お前が使う原理述にもああした特定の攻撃に対する耐性を弱める技式はあるが、あの虫が使う液はそれよりも数段強力だ。とにかく、角を喰らう前にさっさと倒してしまえ。これが今回の助言だ」

 どん、と背中を叩かれて、つんのめりながら階段を上がる。
 客席からの歓声が高まり、 そして闘技場の中央付近に移動していた虫達が一斉に〇〇の方を振り向いた。
 鋭く尖る角の先端が一瞬輝く。まるで金属のような光沢。 堅さも恐らくは似たようなものだろう。

(……さて)

 構えながら、先程の鬼腕の助言を思い返す。
 とにかく速攻。角の一撃を貰う前に殲滅《せんめつ》か ──少なくとも数を減らさないと駄目なのだろうが、 虫の身体を覆う殻も、角と同様に硬質の輝き。防御能力も高そうだ。
 そうして様子を見ている間にも、 虫達の口元にぐじぐじと泡が生まれるのが見えた。 悠長にしている間はない。〇〇は姿勢を僅かに落とすと、 甲虫達に向かって全速で駆け出した!

     ***

鋭角の進軍が現れた!

鬼腕

─See you Next phase─


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