TOP[0]>攻略ルート選択 >リザルトTOP

鬼腕2戦目
古代羊の怒涛

『コロセウム』の連試合。
 それは円形闘技場群コロセウムにおける一般的な試合構成の一つだ。
 簡単に言えば、五ないし六組を一集団として総当たりさせ、その勝利数を競うものだ。 その中で一番成績の良い闘士には、栄誉と、 コロセウム側から賞品などが贈られるらしい。
 しかし、 闘技場における戦闘は使用武器等に対する制限は非常に甘く、 勝利敗北の判定も曖昧だ。 総当たりというルールではあるが、実際は途中で脱落せず、 最後まで組み合わせを消化できるかどうかがまず重要となる。 途中三戦を全て勝利で飾ったとしても、 次の一戦で死亡ないしその次の試合に参加できないほどの傷を負ってしまった場合、すべてが無駄ということだ。
 ここでの重要な点は、全四ないし五戦を戦い抜いた中で、もっとも戦績の良い闘士に賞品を与えるという部分だ。
 つまり、全組み合わせが終了する前に全ての闘士が戦闘不能となった場合、コロセウム運営側は闘士に報酬を払う必要もなく、 更には賭けの胴元としても掛け金を総取り。 この構造のおかげで、 裏であれこれときな臭い暗闘があるとかないとか。

「なんていう裏の“設定”は、 外から本の中にちょっと顔を出している程度の我々には関係ないがな」

 闘技場へと続く廊下で、 鬼腕はそう言って裂けた両の口を引きつらせて笑ってみせた。

「今回自分が選んだ連試合は、 『コロセウム』の話の中では序盤に登場する連試合の一つだ。 これが一番、戦いを学ぶ上で使いやすい。 自分もこの書へと入り始めた頃は世話になった組み合わせだな。 あの時は──」

 その辺りの事はどうでもいいのだが、取り敢えず、 自分は何をすればいいのか。
 思い出話に入りかけた鬼腕を〇〇が冷静に止めると、 鬼腕は素直に口を閉じて、ふむと長い顎を一撫で。

「何をといっても……今向かっている闘技場で、 そこで待っている相手と戦えばいいだけだ。 自分のアドバイスを参考にしてな。簡単なものだろう」

 正に言うは易しそのままの口調に、 〇〇は露骨に顔をしかめた。

「そう警戒する程の事もない。なに、 少々やられたところで、 栞を使って世界に忍び込んでいる我々だ、 そう簡単に死にはしない。 胸を借りるつもりでやればいい。……それで、 今日の相手についてだが」

 通路の終わり。小さな階段の先からはきらきらと輝く陽光。
 目的地である闘技場だ。
 照り付ける陽光の向こうに、幾つかの影が見えた。

「古代羊。“大崩壊”以前のロシェと呼ばれる種だな。古く、 そして強い羊だ」

 闘技場で羊を相手にするというのも何だか稀有な経験だ。
 思ったまま呟くと、鬼腕は闘技場に屯している羊と、 その中に立つ一つの人影を眺めたまま、 口の片端だけを器用に上げて笑う。

「つまり闘技場で戦える程の力を持つ羊ということだ。 その動きの特徴の一つとして、 古代羊特有の習性を利用した攻撃がある。見ろ」

 羊達の中に立つ人影──フード付きの外套を羽織ったその人物は、 手にした杖をちりんと鳴らし、そして何か丸いものを投げる。
 すると、その何かを追いかけるようにして、 のんびりと闘技場の中を歩いていた羊達が突如猛烈な勢いで突進を始めた。
 無数の激突音。羊同士が凄まじい速度でぶつかり、 しかし彼らはその衝撃に怯んだ様子もなく、 転がる丸い物体を追いかけていく。
 最初にその丸い物体に追いついた羊が、 それを口にくわえて飲み込むと、その羊も、 他の羊達も突然凶暴さをなくし、 またのろのろとした動きに戻っていった。

「…………」

 一部始終を見ていた〇〇は、そのギャップに眼を瞬かせた。
 羊というよりは、まるで闘牛をみているようだった。

「羊使い、あのフードの男がああやって羊達を操って戦う。 まともに戦えばあの羊達の狂気じみた突撃を正面から喰らう事になる。一発二発なら耐えられるかもしれんが、 更に続けて喰らうと……さてどうなるだろうな」
 鬼腕がそこで漸く振り返り、〇〇を見下ろす。

「あれが今日のお前の相手だ。羊使いが使う液体と、 そして空中へ跳ね上げる攻撃。 それにどう対処するかが鍵だな」

 そして鬼腕は〇〇の背中に回ると、 通路から闘技場へと片手で押し出した。 つんのめるようにして闘技場へと姿を現した〇〇に、 辺りを囲う客席から歓声があがり、 そして対戦相手である羊と羊使いが、 やってきた〇〇を一瞥する。

「さて、頑張れ。兎に角勝つか、最低引き分ければ良しだ」

     ***

古代羊の怒涛が現れた!

古代羊の怒涛

─See you Next phase─


画像、データ等の著作権は、 Copyright(C)2008 SQUARE ENIX CO., LTD./(C)DeNA に帰属します。 当サイトにおける画像、データ、文章等の無断転載、および再利用は禁止です。